武漢の作家が語った「都市封鎖」60日間の惨状 900万人の被災者たちが心に負った傷は深い

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財新記者:日記のある文章には、「時代の一粒の灰は、人の頭の上に落ちると、すべて一つの山になる。だが、私たちは、よりによってほこりが舞い上がる時代にいる」と書いてあります。知識人は人民と国家の大災害を前にして、どのような責任を負うべきだと思いますか?

方方:それは人民や国家にとっての大災害を前にして、知識人だけが責任を背負うべきだということですか。すべての人々が負うべきではないでしょうか?しかし、担えるかどうか、また耐えられるかどうかは、個人の選択になりますし、個人の能力にもよります。

財新記者:鍾南山(訳注:中国の感染症対策の権威で、政府専門家チームのトップ)は、「武漢は英雄の都市だ」と発言していました。その言葉をどのように理解していますか?

方方:中国では、どの都市も英雄の都市です。武漢だけではありません。だけど、鍾さんはこの感染症で武漢人が何を捧げたのか、そしてどんな被害を受けたのかを知っているからこそ、このような感慨を抱いたのだと思います。

財新記者:あなたは武漢を自分の敬亭山(訳注:安徽省にある名山、李白の漢詩「独座敬亭山」では敬亭山を擬人化し唯一の友であるかのような親愛の情を詠んだ)と呼んでいます。また日記の中には武漢女性の「漢罵」(訳注:武漢地方の特色のある強烈な叱り方)をシェアして、とても気が晴れたと思います。武漢人の性格はどんなものだと思いますか?

方方:武漢人の最大の特徴はサッパリしていることです。もちろん、話し方はとてもストレートです。早口で声が大きいので、それほど上品ではないように見えます。大部分の武漢人は友人のために刀を抜いて助け合うことを好みます。武漢人は常に義理を重んじ、それを誇りに思っています。

日記をやめて次の小説を書き続けたい

財新記者:今回の新型コロナウイルスは武漢人の心理にどのような影響を与えると思いますか。感染症の流行が終息後、武漢の人々はどのように心の再建を進めればいいですか?

方方:今回、武漢人が受けた傷は当然とても大きなものです。死者の話は抜きにしても、診療を求めている時に天に訴えても応答がなく、地に叫んでも返事がない時の惨状、その時の絶望感はとても深いものだったと信じています。

死者はいなくなっても、その肉親は健在で、ともにあの惨憺(さんたん)たる時期を経験しています。こうした最も傷ついた人を置いて話をしないでほしい。60日以上困窮していた武漢の900万の市民にはみんな心の傷があり、抑圧、鬱、いらだちがあります。

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封鎖の解除後、さらに複雑な思いをするかもしれないし、さまざまな後遺症も出てくるだろうと思います。子どもが外出を怖がるかどうか、大人が近くで話すのを怖がるかどうかなど、ウイルスへの恐怖も長く残ると思います。

財新記者:感染拡大が終わり武漢の閉鎖が解除されたら、一番やりたいことは何ですか?

方方:日記を書くことをやめて、数日間ゆっくり休んで、まだ完成していない次の小説を書き続けたいと思います。

(財新記者:蕭輝)
※原文は3月25日の現地時間13:20配信

財新編集部

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Caixin

2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

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