「公務員になれば一生安泰」発想は改めるべきだ 公務員を目指す際のデメリットは少なくない

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デメリット1少子高齢化、生産性向上(IT化)が進み、介護福祉への職種転換もありうる

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、少子高齢化が進行し、2040年には2015年比で人口が1569万人減少すると言われている。とくに人口が少ない自治体ほど人口減少率が高くなるとも試算されている。

また、厚生労働省の試算では、2025年時点で介護福祉の仕事をする人が37.7万人不足するとしている。これらの状況をまとめると、次のような可能性が考えられる。

・人口が減ることで、公務員の仕事のニーズが減り、雇用も減る
・人口が減ると税収が減るため、生産性の向上が求められる(従来の事務的な仕事が減る)
・自治体の統廃合が進む(雇用が減る)
・高齢化が進み介護福祉のニーズがより一層高まる(職種転換ニーズの増大)

これらの状況となることを想定すると、公務員に抱いている「安定」というイメージは盤石なものとは言えない。「安定」を求めて公務員を目指すのはいいが、公共性が高い公務員という性質上、社会や地域の変化によって仕事の内容も変わっていくことは考慮すべきである。

ただ、公務員には事務職だけでなく、専門的なポジションもある。専門職(国税専門官・財務専門官等)や技術職(土木・建築・機械・電気電子・化学・農業・林業等)であれば、上記のようなデメリットはほとんど無関係で、イメージどおり安定して働ける環境があると思われる。

事務系の仕事の転職ニーズは低い

デメリット2市場価値につながる専門スキルが身に付かない

専門職や技術職であれば、専門的なスキルや仕事の実績が身に付くが、一般行政職(事務職)の場合、事務的な業務が中心となる。その仕事の多くはデータの入力・編集業務が中心となっており、窓口での書類発行業務(住民票、印鑑証明書等)も含まれる。

パーソルキャリアが運営する大手転職サービスdodaの職種別求人倍率によると、事務・アシスタント系職の求人倍率は直近5年間、最も低く、約0.3倍前後(希望者3~4人に1人しか採用されない)で推移している。全体の数字が2.5~3.0倍程度で推移しているので、転職市場における市場価値はかなり低い。

事務業務は各企業とも非正規社員(派遣スタッフ)でまかなうことが多く、おまけに昨今のIT化によってさらにその仕事は減っている。そのため、公務員の一般行政職(事務職)での業務経験は転職市場ではそこまで評価が高くなく、公務員から民間企業への転職を考えた際には苦しい状況となる可能性がある。公務員としてずっと働いているうえでは問題ないが、「つぶしの効く仕事」とは言えないだろう。

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