幡野広志「人の悩みに答える男」の偽らざる素顔 余命3年宣告された「なんで僕に聞くんだろう」
――しかし、それに気が付かない人もいます。1983年生まれでまだ30代の幡野さんが、どうしてここまで達観しているのかと思います。
年齢はあまり関係ないと思いますよ。僕は病人なんで、病院で高齢者からたくさん話を聞く機会がありますが、つまらないと思うことがほとんど(笑)。現役の方の話のほうがはるかに刺激的で面白い。30~40代の人たちというのは、その時代では行きついた答えを出している世代だと思います。これもまた、10年、20年経つと変わってくると思いますが。年齢が上がれば上がるほどキャリアはあるけれど、優秀とは言いがたいという人はどの分野にもいると思います。
――答えに悩むときはありますか。
ないですね。毎週100通程もある相談すべてに目を通していますが、その中からどの相談を選ぶかは悩みますが。
――人の悩みに答え続けることで、精神的・肉体的な変化は?
相談を文章でしか読んでいないので精神的には楽ですが、相談を対面で聞いたら精神はゴリゴリに削られてしまうと思います。基本的に重たい相談は、なるべく直接的には話を聞かないようにしています。
――ご自身のモチベーションとは何でしょう?
相談に応えると、Twitterやフェイスブックなどを通して、ご本人からお礼のお返事がきます。それは嬉しいですね。
病気になると考えることがたくさん出てくる
――物事を深く考えるようになったのは、病気になられたから?
病気になると、環境がガラッと変わるので考えることがたくさん出てきます。
今朝(取材日は2020年2月3日)、マスクが軒並み売れているというニュースをテレビで見ました。薬局の前に長蛇の列ができていて、マスクを買い求める高齢者の姿が映っていました。それを見て、日本の景気は「不安」への対処で解消できるんだなあって思いました。
高齢者は将来が不安で貯金するのに、病気が不安で消費する。いかに自主性がないか。このニュースを見て、うまく「不安」を与えれば、消費するんだなあなんてことを考えました。ちょっとしたことで考えるネタができますよね。何を見ても何かのヒントになることは多いと思います。ただし、想像したり妄想したり深く考えるのは、生まれつきですね。
余命を知ることは、自分の人生でやりたいこと、自分にとって何がいちばん大切なのかを真剣に考えるきっかけと時間が与えられること。死の匂いを感じることで、絶望を感じることで、生きることを真剣に考えます。
――余命を告げられる前後で、日々感じることや物事の捉え方などは、具体的にどのように変わりましたか。
“好き嫌い”が極端になりましたね。キライな食べ物は一切食べなくなりました。食べられる量は決まっているのに、それをキライなもので埋めたくありません。
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