アップルショックに電子部品各社が楽観なわけ 落ち込みは一時的?高い5G関連需要への期待

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2019年4~9月期は自動車市場の低迷で下方修正を迫られる会社もあったが、2019年10~12月期は5G向けの投資がスタートしたことやiPhoneの販売が順調だったことから、電子部品各社の業績は堅調に推移していた。それだけに、iPhone向け部品の売り上げ比率の高い企業からは「iPhoneの売り上げが改善していただけに、肺炎で影響が出るのは残念だ」(日系コネクターメーカーの幹部)との声もあがる。

中国国内で電子部品や電子機器を製造する工場は、2月上旬まで長引いた春節休暇後も、稼働再開に向けた動きが鈍いままだ。大半の工場は地元政府の許可を受けて稼働を再開しているが、「(稼働率は)平時の3~5割にとどまる」(複数の日系電子部品メーカー)という。

車載向け電子部品への影響も

深圳市にある台湾系EMS(受託生産)工場のマネージャーは「感染防止のため、地元政府が通常の半分の人員しか現場復帰を認めていない」と明かす。春節休暇で帰省した従業員が交通規制や隔離制限に遭い、職場に復帰できないでいる。必要な部品が1つでも欠ければ、スマホの生産はストップするため、完成品をどこまで供給し続けられるかも今後の焦点となる。

中国における交通規制や税関業務の遅延などのせいで、物流が滞っている地域もある。日本の工場から出荷している最先端部品や現地工場の生産製品が、在庫となって積み上がるケースも一部では出てきた。完成品の生産工場に部品が届いても「稼働率がなかなか高まらず、使用予定の一部部品が積み上がり続けている」(前出の工場マネージャー)。

さらに、一部企業がスマホ以上に懸念しているのは車載向け電子部品だ。村田製作所やTDKの売上高に占める車載向け部品の比率は現在、10%台にのぼる。自動車1台当たりに使われる電子部品点数はスマホの3~10倍と多く、1個当たりの単価も高いとされる。「スマホ依存」を脱するためにも、電子部品各社はここ数年、車載向け電子部品を新たな成長領域として伸ばしてきた。

ところが、今回の新型肺炎ショックで、中国で生産された車載向け部品の供給が滞り、日本国内の自動車工場が稼働を一時停止するなど生産調整を繰り返している。世界最大の自動車市場である中国の消費が落ち込めば、「成長の牽引役だった車載が実は鬼門」(中堅コンデンサーメーカー幹部)となる危険性もある。

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