新型肺炎で進む台湾ビジネス界の「中国離れ」

武漢に「台湾人400人足止め」がトラウマに

武漢に滞在中の台湾人は他国と異なり、現地に留め置かれ続けた。写真は2020年1月にアメリカ政府のチャーター機で帰国した武漢滞在のアメリカ人ら(写真:ロイター/アフロ)

親中国が多いとされた台湾ビジネス界の雰囲気が急速に変化している。

台湾のビジネス界では、中国との関係を重視する意見が強い。中国は13億人の人口がいる世界最大のマーケットであり、中国政府は台湾統一策の一環として「ビジネスをもって政治を囲い込む(以商囲政)」という戦略をとり、台湾企業を優遇してきた。

その一方、米中貿易摩擦やハイテク技術の中国への流出リスク、人件費の高騰など、中国で事業を展開する利点は徐々に薄まりつつあり、対中投資を控える動きも出ている。さらに、今回の新型肺炎をめぐって中国政府が台湾に対してとった対応が、台湾のビジネス界に中国離れを促しそうだ。

中国赴任や出張の見合わせが続出

中国に工場を展開している台湾企業の中には、台湾人社員や幹部の感染を防ぐため中国赴任や出張を見合わせるケースが出ている。ただ、台湾企業がここにきて中国に距離を置きつつあるのは新型肺炎の広がりそのものが原因ではない。

台湾北部・新北市に本社があるコンピュータ部品・周辺機器製造メーカーの役員の1人が2月上旬、韓国の首都ソウルに降り立った。重要顧客である韓国の大手電機メーカーとの会議のためだ。

会議の日程自体は2019年12月に決まっていた。韓国の顧客が2020年の秋以降に発表する新しいパソコンに使用する部品の生産について話し合うことが目的で、台湾側の出席者は当初、生産管理部門の担当部長クラスだった。役員がソウル行きを急きょ決めたのは、部品を製造している自社の中国工場について顧客に説明する必要が生じたためだ。

「南京をはじめとする工場群を移転・縮小させたい。方針を理解してほしい」と役員は話したという。この会社は南京や広州など中国内に4カ所の工場を展開。顧客の主力工場の1つが南京にある。

次ページ中国の対応に不信感を募らせる台湾企業
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