「怒る」と「叱る」の違いを知らない上司の大盲点 なぜ部下を人前で叱る上司ほどダメなのか

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まず、叱る前に注意することは、「人前で叱らない」ことです。相手の成長を促すために叱っているのに、人前で叱ってしまうと、叱られている人は「恥をかかされた」と感じてしまいます。そのため、別室に連れていって1対1で叱る必要があります。もちろん、その場で叱ることが必要な場面はあります。

例えば、周囲の人や、その方自身の安全を脅かすようなミス、絶対にここで叱って気づいてもらわないといけない場面では、その場で叱ることが必要です。そのような状況でない限りは極力人前で叱らないように注意しましょう。

●叱ることは一度に1つに絞る

叱ることは1つに絞ることが必要です。ここぞとばかりに2個、3個と叱ることが増えると、何について叱られているかがわからなくなります。あれこれと指摘したい気持ちはわかりますが、しっかり整理して、「今日はこの点を叱る」という指摘事項を明確にすることが必要です。

5ステップで叱る

次に実際の叱り方です。私は5つのステップを踏んで叱るように指導しています。

5つのステップは、
第1ステップ「何をしたのか事実のみを伝える」。
第2ステップ「叱り手の気持ちを伝える」。
第3ステップ「『どう思う?』と相手の考えを確認する」。
第4ステップ「フォローする」。
第5ステップ「今後の期待を伝える」。

です。

例えば、ある若手が始業時刻に連絡もなく30分遅刻して、会議ができなくなった場面を想定してみましょう。「怒る」であるならば、遅刻の連絡もなく、会議ができなくなった怒りをその場でぶつけます。遅刻してきた若手に最初にぶつける言葉は、

「何やってんだ! お前のせいで会議ができないんだぞ! 連絡もしないでやる気あんのか!」と罵声(ばせい)が飛びます。

若手は、「すみません!」とただ謝るだけで、弁解もできません。これでは「次は遅刻しないように頑張ろう」という気持ちは生まれません。逆に、モチベーションは大きく下がり「そんな言い方はないだろう」という反発心が生まれ、パワハラになる可能性もあります。若手の成長を促すことにはつながりません。

では「叱る」としたらどうなるでしょうか。まず「何をしたのか事実のみを伝える」ためには冷静にならなければなりません。第一歩は、自身の気持ちをコントロールすることが必要です。若手を別室に連れていき、1対1でしっかりと「事実」を伝えます。

「○○さん、今日○○さんは、9時始業に対して30分遅刻しました。そして、会議が開催できなくなり、多くの参加メンバーに迷惑をかけました」

相手が何をしたのか、事実をきちんと冷静に伝えます。事実に関しては、相手も冷静に受け止め、納得せざるをえなくなります。

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