欧米の女性とはまた違う観点、価値観で日本社会における「女性の壁」を語る権。その姿勢は日本人の目に新鮮に映る。もしかすると、日本には「女性をオープンな全面競争に暗に参加させない壁」もあるが、その産物なのかどうなのか、「“女性が”オープンな全面競争に参加しようとしない壁」もあるかもしれない。
「私は中国人の中ではおとなしいほうだったので、自分なりに日本が合うのではないかと留学先に選んで来てみました。でもいざ日本に来てみると、おとなしい性格の私でも違和感を持ちました。イギリスでも女性だからどうこうというのはありませんね。例えば日本ではなぜ“女性の医師”と呼んだりするのか、それも不思議です。医師は医師です」
エリート中国人母の視点から見た日本の教育
1986年に大学を卒業した権は、「中国はこの30年で変わりました」と記憶をたどる。「私が学生だったころ、女子学生が男性と付き合うのは禁止で、私は大学時代も化粧をしたことがなく、ジーパンも禁止されていたような時代でした。今の若い人は、昔とまったく変わりましたね」。
その変化は、結婚に対する価値観へ顕著に表れているそうだ。かつての中国では、結婚や出産について女性が日本ほどあまり大っぴらに話さない社会だったという。権は、大学で同級生だった夫とそのまま結婚して子どもをもうけた。「母が、大学では勉強に専念しなさい、1年目はまじめに勉強だけで、2年目以降にいい人がいたら……と、そこははっきり言わないのです。そういう時代でした」。
現代の中国では、結婚年齢に達した子どもたちはみな1人っ子政策世代。子どもよりも親が「子どもを結婚させなければ」と2~3倍のプレッシャーを感じており、30歳を越しても結婚していなかったら親同士でお見合いをし、それから子どもにプッシュするのだという。
「中国社会では30歳という年齢の持つ意味が大きく、26~27歳など、相対的に日本より結婚や出産は早めです。それでも今の中国では結婚がオープンになってきて、子どもたちは親の押し付けに反抗します。とくに日本などの国外で勉強して、一人暮らしの楽しさを知ってしまうと、結婚願望は薄れるものです」
中国の若者にも晩婚傾向が見られるようになったということのようだが、女性のキャリアと結婚出産という点では、日本社会と中国社会には明らかな違いがある、と権は指摘する。
「中国と日本の社会が違うのは、若い女性が子どもを産むと親や祖母が全力でサポートして、その女性が仕事を続けて稼ぎ続けるようにすることです。大学や研究所にも保育所があり、女性は出産してからも仕事するのが当たり前。母親もそうでしたし、自分もそうですし、中国の女性はそういう感覚で生きています」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら