中国人エリート女性研究者が見た競争なき日本

彼女が「日本は幸せだな」と思った理由

「イギリスの医薬界は半分が女性で、女性がワイワイ意見を述べる文化。中国も女性の人材がたくさんいて、政府などでは女性は少ないけれど、家庭でも会社でも女性の立場が強いのです」

日本では第一印象として、表に出てくる女性が少ない、そして女性に任される仕事が少なくて不利だと感じた、と権は話す。「中国では、学生時代も社会に出てからも、自分が女性だから不利になるというのは、あまり感じなかったことでした。仕事を始めたら、能力主義なので自分が女性であるとはとくに感じません。リーダーにも女性が多いです」。

中国でも、男女が完全に平等な機会を与えられているとは必ずしも言いがたい。大学はすべて国立で、人気のある学科や研究室にはまず男性のほうが入りやすい。就職にも男女の採用差別はあり、就職後も、結婚出産のある女性が男性とまったく同じタイミングで出世するのはまだ難しい。そんな環境で、なぜ女性が不利であるとは感じないビジネス環境が成立するのか。

レディファースト、“女性枠”の存在

「それはレディファースト、“女性枠”があるからです。人民大会(筆者注:全国人民代表大会。中国の一院制議会であり、国家の最高権力機関および立法機関である)でも、共産党員や無所属、知識層、少数民族など比例して“枠”があるように、チャンスがつかめればその“枠”に入ることができて登用される。でも日本では、名目上は賃金差別などがなくても、女性であることを理由にした見えない壁を感じます」

民主主義社会では“枠”という発想に慎重な議論も必要と思われるが、あまりに人口規模の大きい中国社会では“枠”の中でさえ席をめぐっての競争が激しく、その競争は能力主義で、しかも女性に開放されているということなのだろう。

「日本でも美容系や製薬系など、ケミカル分野での女性の数は20年前に比べて増えました。でも事業展開のときに、見えない壁が出てくるんです」

権の言う“日本社会の壁”とは、中国のように実力さえあれば必ず登用される“枠”さえなく、そもそも女性やマイノリティーを公正に競争に参加させない社会の暗黙の了解や無言の圧力、つまり「オープンな全面競争に参加すらさせない、見えない壁」と理解すれば納得がいく。

「中国ではとにかく自分が努力しないと認められないですから、女性は男性以上に2倍の努力と勇気を持って、社会で競争しなければいけません。仕事をしながら家庭のことをする時間も、自分で捻出する努力が必要で、それは自分自身が覚悟してすること。不公平と思ったことはないですね」

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