言葉の壁からなかなか定職に就けなかった父親も、ここ数年は事業が軌道に乗り、再婚相手の女性とともに、日々忙しく働いているということです。ちなみにむつきさんは、この父親の再婚相手の女性――「2ママ」(2番目のママ)と呼んでいる――とも仲がよく、また1ママ(北京にいる父親の前妻)と2ママも、非常に仲がいいということです。
「2つの文化」のせめぎ合いを経験する子どもたち
いま日本では外国人の雇用が増え、親に連れられて来日する子どもがとても増えています。これまでの言語が通じない国で、環境変化に戸惑う子どもたちに、何かアドバイスできることはあるか?と尋ねると、彼女はこんな話をしてくれました。
「自分がこれまで持っていた文化と、日本の文化がぶつかり合うときって、必ずあると思うんです。とくに子どもの場合、家ではこれまでの文化、学校では日本の文化に接するから、両者がせめぎ合って、結構悩ましいと思う。挟まれていると、つらくて逃げたくなるんです。学校に行きたくなくなったり、逆に、家族と話したくなくなったりする。
そういうときには、『自分はこうする』と選択をして、かつそれを言葉にしていくことが大事だと思います。『私はこうする』と自分にも周囲にも宣言することで、どちらにも流されないようにできると思うので」
そしてもう1つ、「2つ以上の文化やルーツをもつのは、決して悪いことではなく、自分の人生をさらに豊かにできるすごいことなんだ」ということも、伝えたいそう。
例えば、今むつきさんは「赤」という色が大好きですが、高校生の頃まではずっと「なんとなく避ける色」だったといいます。赤は中国の国旗やお祝い事などに必ず使われる、象徴的な色ですが、彼女は高校生の頃まで「日本に育ったのだから日本人でなくてはいけない」という意識が強かったため、赤を避けていたのです。
しかしその後、アメリカの大学に進学し、さまざまなバックグラウンドをもつ人と交流する中で、むつきさんは中国と日本という2つのルーツをもつ自分を肯定できるようになりました。そこでようやく「赤を好きな自分」を許せるようになったのでしょう。
2つの文化がせめぎ合ったときは、どちらか一方を否定するのでなく「両方いいじゃない」と肯定できるといいのでは。そのうえで「自分が何を選択するか」を、都度決められるといいのかな、というふうに筆者は受け止めました。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら