映画「楽園」は事件で残された人を描いた作品だ

瀬々敬久監督が吉田修一の犯罪小説に挑む

――弱点とおっしゃいますが、それこそが瀬々監督の作風でもあるなと思いました。犯罪者はモンスターではないですが、それでも犯罪者にも悩みがあるという部分などは納得する部分があります。

作風というよりはスタンスですね。だからそういうスタンスで描けるとなったらオファーを受けようと思っています。そもそも勧善懲悪ものはあまり好きではないですから。

瀬々敬久(ぜぜ たかひさ)/1960年生まれ、大分県出身。1989年公開『課外授業 暴行』で監督デビュー。2011年公開の『アントキノイノチ』で、第35回モントリオール世界映画祭・イノベーションアワードを獲得。2016年公開の『64 -ロクヨン- 前編』では第40回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞する。主な映画監督作品に、『MOON CHILD』(2003年)、『感染列島』(2009年)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015年)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年)、『友罪』 『菊とギロチン』(2018年)など  (筆者撮影)

――瀬々監督は常々、映画の大小や、商業作品かインディーズ作品であるかなどは関係ないとおっしゃっていますが。

それは今でもそう思っています。やはり物を作るということは自由でないといけないし、いろんな選択肢、自由の幅があったほうがいいわけです。

本来、俳優部やスタッフだってみんな自由であってほしいところなんですが、なかなかそうもいかない。ものを作るには取り決めとかいろいろありますから。

ただ、そうした取り決めの中でも、自由にやっていきたいということが基本にある。既成のものを壊したいとい気持ちや衝動があって、それが出来るのであれば、ジャンルを問わずに試したい。選択肢の幅が広い方が自由度も広がるわけですし、自主映画だろうが商業映画だろうが、関係ないと思っています。

映画はスポーツ観戦に近い

――そんな瀬々監督にあえて伺いますが、監督にとっての映画ってなんですか。

何でしょうね……。でもそれはもうなんかスポーツ観戦と近い感じがするんですね。やはり映画館という共通の“場所”で、みんなが同じ方向を見て、そのフィクションを楽しむ場所だと思います。

そこで血湧き肉躍らせて、共通の体験を持って帰るという。そうした映画館体験が非常に重要な気がします。そうするとその“場所性”みたいなものが非常に大きい。みんなと一緒に観るということが非常に重要な気がします。

――それが映画というものであると。

それから自分にとっての映画というのはやはり「仕事」ということになります。

仕事って人生活動的な意味があるじゃないですか。お金を稼ぐというよりは、この仕事を通して人と知り合ったり、新しい世界を知ったりしている。そういう意味では、僕らも映画を作らなければ人と知り合うこともないだろうし、新しい世界を見ることもない。それこそが自分にとっての「仕事」という意味になるわけです。

(文中一部敬称略)

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