映画「楽園」は事件で残された人を描いた作品だ

瀬々敬久監督が吉田修一の犯罪小説に挑む

そして今回の『犯罪小説集』もそう。僕らが映画化した2編(「青田Y字路」「万屋善次郎」)は、地方の閉塞的な空間の中にあるいろんな人間関係の中で事件が始まるわけですが、やはりそれも“場所”が重要なポイントになっているなと感じました。自分自身もロケーションにはこだわるほうなので、そこに共通のものを感じることはありますね。

未解決の少女失踪事件の犯人として、住民から疑われる青年・中村豪士。この役を綾野剛が務める ©2019「楽園」製作委員会

――今回の映画でも、少女がいなくなってしまう「Y字路」の舞台が非常に印象的でした。

なかなか原作どおりの「Y字路」が見つからなかったんですよ。それこそ制作部が、まずGoogleマップでしらみつぶしにY字路を探していったんですが。実際の場所に行くと、やっぱり違ったりするわけですよね。

俯瞰ではY字路っぽくなっていても、実際に行くと、匂いというか、雰囲気が違う。映画の撮影場所となったY字路も、コンクリートのゴミ捨て場になっていたところに、美術の磯見俊裕さんが実際に木を持ってきてそこに植えたものです。そうすれば冒頭のシーンがいけるということになりました。そしてその植えた木を元に戻せば、時が経ったようにも見える。ここは磯見さんのアイデアの勝利ですね。

撮影は“場所”を探すことから始まる

――やはり瀬々監督の映画では撮影場所を探すことが大事になるということですね。

この映画に限らずですが、まず“場所”を探すことから始まりますね。それと並行してキャスティングも進めるわけです。

――以前、吉田修一さんは「自分の小説はまったく映像化を想定していない」とおっしゃっていました。瀬々監督の場合、小説から映画化するに当たり、まずはどこからアプローチをしていくのでしょうか。

やはり小説の中からヒントを探すということですね。クライマックスの部分なので詳細は言えないですが、『楽園』でも、小説のストーリーとは関係のないところに、作者の視点や描こうとしている意図といった、映像化におけるヒントが隠されています。それをヒントに映像化するということは往々にして多いと思います。

――そうすると、小説を何度も読み返すということですか。

でもそこは第一印象がいちばん大切な気がします。「青田Y字路」という小説も、最後に出てくる登場人物の後ろ姿や、とある小道具が印象的だった。ですからそれをキーに映像化していこうということはありましたね。

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