令和に年号が変わると、平成時代のことが遠い過去のように見えるから不思議である。しかしつい先月、東大の入学式で上野千鶴子さんが述べたスピーチは、令和の時代に解決すべき課題の1つが女性に対する見えざる差別であることを示している。
上野さんも指摘しているが、2018年夏、東京医大で女性と浪人生が入学試験で不利に扱われたことが明らかになり、大きな批判にさらされた。その後の調査では東京医大だけではなく、多くの私立大学医学部では明らかに男性を優遇しており、女性の入学を差別していない学部学科より男性が多い傾向を示していた(今春は改善された)。
入学試験は点数順に差別なく合格させるものだと思っている人はびっくりしたかもしれないが、私はそれを聞いても「やっぱり今もそうか」と思うだけでまったく驚かなかった。
活躍を期待されない女性たち
医学部入試だけでなく、現実の社会では男性が優遇されている。試験の点数だけで判定されているのは限られた分野であり、大企業の入社試験をはじめ、いろんなところで男性が優遇されているのは「常識」だった。入社試験でペーパーテストの順に採用すると女性が多くなりすぎて困るというのはよく聞く話だ。
企業だけではない。司法試験や公認会計士といった難関国家資格試験では、女性の受験者数は依然として少ない。2017年では男性が4409人に対し、女性は1558人で、受験する前から諦めているとしか考えられない水準だ。結果として、合格者の男女比は8:2と多くの医学部以上に男性の比率が高い。東大も今年の女性入学者は18.1%と、筆者の時代に3%だったのに比べると6倍に増えているが、それでも世界の一流大学に比べると明らかに低い水準である。
昭和に育った私たちだけではない。平成に育った多くの女性たちも「女の子なんだから無理に頑張る必要はないよ」「どうせ女の子だからよい成績をとっても(よい進学をしても)将来はたかが知れているよ」「できる女性になるより、いい男性(周囲の人)から愛される素直でかわいい女の子のほうが幸せになれるよ」というメッセージを受けて育ってきた。
教科書には書かれていないが、親からも教師からも、時には友人たちやマスコミからも隠れたメッセージは届く。それに引き換え、多くの男の子は「頭がよくて成績がいいから将来が楽しみ」「男の子なんだから頑張って勉強して(スポーツに励んで)成功を目指せ」「男の子なんだから数学をしっかり勉強しなくては」と期待されて育つ。
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