上野千鶴子さん、なぜ「女」は辛いのですか? 20~30代が知らない、日本の「女の歴史」
私は「がんばって」と他人に言うのもイヤだし、他人から言われるのもイヤだ。がんばりたくなんかないのだから、それでなくても女はすでに十分がんばってきた。がんばってはじめて解放がえられるとすれば、当然すぎる。今、女たちがのぞんでいるのは、ただの女が、がんばらずに仕事も家庭も子供も手に入れられる、あたりまえの女と男の解放なのである。
――4月から新しい法律が施行されることもあり、「女性活躍」への関心が高まっています。当事者の感覚とはギャップがあるようで、子育てしながら働いている女性たちは大抵「別に輝かなくていいから、ふつうに働きたいだけ」と言います。どうして、こんなギャップが生まれるのでしょう。
そうですね。新しい法律や最近の風潮を語る前に、これまで何が起きたか、この社会は変わったのか、変わらないのか、読者の皆さんと認識を共有しておきたいと思います。
男女雇用機会均等法は、白鳥ではなくカモになった
「女性の活躍」は労働市場に女性を引っ張り込むためのキーワードですが、ほぼ同じことを目指した法律が、30年前に作られました。男女雇用機会均等法(均等法)です。
この法律が何をもたらしたのか、20代30代の皆さんはご存知でしょうか。昨年2015年は、均等法ができてちょうど30年という節目の年でした。日本学術会議で開かれた「均等法は白鳥になれたのか?」というシンポジウムで私が話したのは、「均等法は30年経って、白鳥ではなく鴨になった」ということでした。「カモられる」鴨、のことです。
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