上野千鶴子さん、なぜ「女」は辛いのですか? 20~30代が知らない、日本の「女の歴史」

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■上野語録3:仕事と夫と子どもを手に入れても
規格品の優等生の女たちは、がんばった分だけ、報酬があると思いこんでいる。なぜならこれまで努力が報われなかったことはなかったからだ。<略>そして仕事のほかに、夫と子どもを手に入れた後で、こんなはずじゃなかった、と愕然(がくぜん)とする。職場も、家庭も、変化した女の規格に合わない時代遅れの仕様のままだからだ。

――女性がケア責任をひとりで引き受ける構造が変わらない限り、「活躍」も「頑張って報われる」もあり得ない、ということですね。

そうです。均等法が「ネオリベのカモ」になった理由、もうわかっていただけますよね。男性の働き方を変えずに、男性仕様のルールで動く職場に入っていく女性だけを均等待遇したことが問題だったのです。

原則的に「男は自発的には変わらない」

男性の働き方を変えるというのは、育児や介護といったような「ケア」、つまり、女性がずっと無償で担ってきたことを、男性も責任を持って分担することを意味します。最近、少し変化を感じるのは、男性が家事を「手伝う」という言葉はおかしい、と言う人が増えたこと。インターネットでそういう意見を目にしますね。男性も家事をするのが当たり前だから、お客さん感覚で「手伝う」は違うでしょうって。

よい変化もある一方で、30代40代の「活躍している女性」から彼女たちの夫について、聞くと本当にがっかりするの。エリート女性の夫は、同じくエリート男性。彼らは驚くほど家事も育児もしない。なぜって妻が要求しないから。この点では日本の男性は何十年も、変化がありません。

――夫の家事育児分担・参加は読者層の20代30代ビジネスパーソンの関心が高いテーマです。

原則的に「男は自発的には変わらない」ということを伝えたいです。要求しても変わらないことが多いのに、要求しないかぎり絶対に変わりません。最も切実な関係にある相手から言われて初めて変わる。だから、結婚しているのなら、妻が言うしかないわね。

今の日本の夫婦は、共働きでも女性の方が家事や育児の大半をやっていることが多いでしょう。お話したように、夫を変えられるのは妻だけ。妻が要求しないと夫は変わらない。残念ながら現実を見ると、妻が何も言わないことでうまくいっているカップルも多いわよね。妻は不満を飲み込んでいる。でも飲み込むと、身体の中に毒が回る。だから、フェミニズムを知って解毒剤にしてほしいの。

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