長い間、女性が一定の収入を得ようとすれば、専門的な技術、資格を持つべきとされてきた。
「手に職」という言葉があるが、教員、司書、学芸員、幼稚園教諭、薬剤師、看護師、臨床検査士、管理栄養士、保育士、不動産鑑定士、ファイナンシャルプランナー、などの資格は女性に人気である。
近年、女子大はこうした資格を取れる学科を設置し、女子学生を引き付けてきた。結婚・出産で仕事を辞めても、こうした資格があれば、再就職も可能かもしれないと考える保護者や学生たちのニーズに対応してのことだ。
こうした資格にひもづく職種は、どんな仕事をするかが具体的にイメージしやすい。将来どんなキャリアと人生を歩むかわからない、見当もつかない女子高校生たちにとって、目標にしやすいという魅力もあるのだろう。
実際、組織で資格を持たない普通の女性が生きて行くのは簡単ではない。男性は大学でさほど勉強しなくても、就社してからon the jobでしっかり鍛えられ、育てられる傾向がある。それにひきかえ女性は従来、出産育児を機に数年程度の短期で離職するケースが多いことを理由として、教育や訓練は十分に行われないことが少なくなかった。そこで会社での教育を当てにせず、自分で大学や短大、専門学校で資格を取ろうとしてきた。これは欧米で多い「ジョブ型」の働き方である。
男性の場合、いまなお就社のときに重視されるのは「うちの社員、うちのメンバー」としてふさわしい潜在能力があるかどうかといったことだ。大学で学んだことや成績はさほど重視されず、地頭のいい、性格が明るくて、積極的で健康な男子が”潜在成長力がある人”として歓迎された。定年までその組織に属する「メンバーシップ型」の働き方だったからである。
男性主体のメンバーシップ型の組織に、途中で辞めることも多いとみなされる女性が入れてもらうのは容易ではなかった。
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