「女子は資格職が一番」と今なお考える親たちへ 女性が多い職種が持つ「行き止まり」リスク

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では組織で生きるのが困難だからといって、資格職なら安泰かというと、単純にそうとはいえない。

例えば、教員や看護師は女性の職業として確立している。労働条件も整い、生涯所得も多い。今も「看護師か教員が女性に一番安定した職業」と考えている親は少なからずいる。

しかし女性に人気の資格にも“盛衰”がある。これからの高齢社会では看護師などの医療介護職はニーズが引き続き強いが、どんな資格でもいいわけではない。小中高校の教員は少子化で増加は考えにくく、新卒で正規の教員に採用されるのはむつかしい。

将来、育児の手が離れたら再就職したい、そのときに資格が役に立つのではないかと考えている学生や保護者もいるが、答えは「資格があるだけではだめです。どのような資格か、どのような経験をしているかによります」である。

さらに、ニーズ自体はあっても、そもそも労働条件が厳しい職も多い。保育士や介護福祉士は需要に供給が追い付かず、引っ張りだこで再就職もできる。しかし、労働条件や将来の処遇は厳しい。

看護師は中小病院から需要が多く、とくに夜勤シフトもできるならば歓迎される。

教員の世界の再就職も厳しい。資格を持ち経験があれば、非常勤の講師には採用されるかもしれないが、賃金は安い。司書や学芸員も新しく図書館や美術館が設置されないので、非常勤の契約職員の場合が多い。

とても残念なことだが、シカゴ大学の山口一男教授が指摘されているように、そもそも日本では教育や資格が必要な専門職でも、女性の多い職種は賃金が高いとは言えず、デッドエンドジョブ(行き止まり)になっていることが多い。

とくに学校の非常勤講師、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの非常勤の専門職は経済的にはあまり報われない。医師、弁護士、公認会計士などの高度専門職と比較すると賃金は低く、雇用も安定していない。

私はこうした女性が多い専門職の地位や処遇を上げる、とくに非常勤で働くこうした専門職の時間給を上げる政策が必要だといっているが、すぐには実現しないだろう。

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