上野千鶴子「東大生も追いつめる自己責任の罠」

子どもたちはいったいなぜ壊れ始めたのか

日本の社会はどれだけ変わったのでしょうか?(撮影:梅谷秀司)
東大入学式の祝辞で、日本中に女性差別に関する議論を起こした上野千鶴子さん。広範な支持を集めた理由に、#MeToo運動や東京医科大の入試差別があったと上野さんはみる。女性差別についてこれまであまり気づいていなかった人も問題の存在を知り「世論が耕されていた」ことが、幅広い人々による東大祝辞をめぐる議論の背景にあるという。
一方で何十年も変わらない問題もある。職場や家庭、社会における女性の地位は、どのくらい変わったのか。変えた要因は何か。残る問題は何なのか。上野さんのこれまでの発言を多数収録した『上野千鶴子のサバイバル語録』の名言とともに、聞いた。

――前回記事で、#MeToo運動や東京医科大の入試差別により、世論が耕されたとおっしゃいました。一方、解決していない、変わらない問題もあるかと思います。何が変わって、何が変わっていないのでしょう。

上野千鶴子(以下、上野):私が見るところ、この数十年でタテマエは変わりましたね。

例えば、結婚しない女、産まない女、離婚する女は、昔も今もいますが、彼女たちに対するスティグマ(社会的烙印)は払拭されてきた。それに、結婚した女が働くことは当たり前になりましたが、かつては外聞が悪いことでした。夫が十分に稼ぐことができない証拠と見られたからです。

フェニミズムがタテマエを変えてきた

それに、今では子どもがいる女性が働くことも、当たり前になりました。確かに陰でいろいろ言う人がいるかもしれませんが、公共の場で結婚した女、子どもを持つ女が働くことを非難する声は減ったし、非難すればその人が批判を受けます。

社会変革とは、タテマエが変わることを意味します。人間の劣情やホンネは変えられません。でも最低限、公共の場で性差別的な言動をしたらアウトだよ、というタテマエが共有されてきました。それを変えてきたのが、フェミニズムです。

■上野語録1:夫や子どもより、自分のほうが大事な女性
日本の女性が非常に変わったところは、自分の利益のほうを夫や子どもの利益よりも優先するようになったこと。私はそれをフェミニズムの影響とは夢にも思いません。少子化の影響が大きいですね。(以下略)『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』
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