上野千鶴子「東大生も追いつめる自己責任の罠」 子どもたちはいったいなぜ壊れ始めたのか

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今でも覚えているのは、お正月に父が「お兄ちゃんは何になる? 〇〇になったらいい。社会の役に立つから」と言いました。弟にも同じように話をしましたが、私の順番は飛ばされた。

それで自分から「チコちゃんは?」と尋ねると、「あ、そこにいたの」という顔をして、「チコちゃんはかわいいお嫁さんになるんだよ」と。そうか、兄や弟のようには期待されていないのか、とショックでした。

だから反対に何をやっても許された。父にとっては理解できない社会学をやりたいと言っても、反対されなかった。期待はされない代わりに、好きなようにさせてくれた、という意味で、感謝しています。私は「翼を折られる」女としての社会化に失敗して今がある、と思っています(笑)。

日本の企業と男性が変わらなければならない

――話を現代に戻すと、今や世帯数では共働きが片働きを上回るようになりました。

『上野千鶴子のサバイバル語録』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

上野:先ほど、男性はあまり変わっていない、とお話しましたが、学生を見ていると変化を感じます。多くの男子学生は「妻に働いてほしい」と思っています。自分1人の収入で妻子を養うのは容易ではなく、自分と同じ学歴の妻が働いたら2倍豊かな生活ができることを体感的に知っているからです。

家事・育児などについても男性の意識が変わってきたことは感じます。今では、夫が家事を「手伝う」「協力する」は禁句ですからね。妻が容赦しません。

ただ、彼らが望むように家庭に関われるかどうかは、働き方の問題です。最終的には日本の企業と男性が変わらなければならないでしょう。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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