AIを使えば、「農業こそ休日」が現実になる

就業人口減少の裏で進むスマート農業の本当

inahoが開発した野菜収穫ロボット。農作業に費やす時間の大幅短縮を目指す(撮影:梅谷秀司)

「働き方改革」は決してオフィスにいるホワイトカラーだけのものではない――。

横浜市青葉区で農業を営む金子栄治さん。2018年7月からミニトマトの栽培を始めた。これまで10年間ほどイチゴを作っていたが、2011年の東日本大震災を機に、さまざまな経験を積もうといったん休止。農業指導でタイへ出かけたりもした。

ミニトマトで農業を再開するにあたり、金子さんがビニールハウスに導入したのが「ゼロアグリ」だ。ゼロアグリとは、土の中に張り巡らした点滴チューブから、水や肥料を自動的に供給する土壌環境制御システム。ハウス内に設置した各種センサーの情報を基に、AI(人工知能)が最適量を判断し、供給してくれる。現状確認や設定変更はパソコンやタブレット、スマホからでも可能だ。

毎日1時間の水やりが1週間で30分に激減

「農業では水やりが重要だが、とても手間のかかる作業。イチゴのときは、水やりの後でテンシオメーターを使って、土中の水分量を確認していた。それをゼロアグリでは自動でやってくれるので助かっている」(金子さん)

ゼロアグリの導入で、水やりの作業が格段に楽になった(金子さんのビニールハウス。撮影:今祥雄)

金子さんの場合、障がい者雇用にも積極的に取り組んでいる。水やりで中断されることがないため、障がい者への指導にも集中できる。ミニトマトは初めて手がけた作物だが、収穫・出荷も順調とのことだ。

ゼロアグリはネットワーク関連機器から農業IT分野に進出したベンチャー、ルートレック・ネットワークスが開発したもの。そのキャッチコピーは「農業に休日を!」だ。

あるトマト農家に導入した結果によれば、ゼロアグリによって、今まで1日1時間かけていた水やりや施肥の作業が1週間に30分間で済むようになった。人手がかからなくなったことから、栽培面積を3倍に増やすことができたという。単位面積当たりの収穫量についても、従来の慣行的な農業に比べて27%アップした実績がある。

農業のIT化、自動化というと、植物工場やハイスペックな鉄骨ハウスが思い浮かぶ。が、「ゼロアグリのターゲットは日本の施設園芸の大半を占める一般的なパイプハウス」(佐々木伸一社長)。そこではデジタル化がまだ進んでいないため、市場開拓の余地が大きいとの判断からだ。

自然相手の仕事なので、片時も目が離せず、一年中休みがない――。そうした従来の農業のイメージを覆そうとするゼロアグリ。まさに農業の「働き方改革」への挑戦だろう。

次ページAIで収穫時期を判断、ロボットで刈り取る
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