商社と金融業界に、メディアが学ぶべきこと メディア中抜き時代の、新しいメディア論

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 グローバル化の進展により、国の枠を超えて活躍する「グローバルエリート」が生まれている。しかし、そのリアルな姿はなかなか伝わってこない。グローバル エリートたちは何を考え、何に悩み、どんな日々を送っているのか? 日本生まれの韓国人であり、国際金融マンとして、シンガポール、香港、欧州を舞台に活動する著者が、経済、ビジネス、キャリア、そして、身近な生活ネタを 縦横無尽につづる。
三井物産などの商社は、「商社中抜き論」を乗り越え、見事に復活を果たした(撮影:尾形文繁)

 さて、最近は『5年後、メディアは稼げるか』という本が、非常に評判がよく売れているようで、今後、メディア業界がどうなるのか、ビジネスモデルがどうなるのかがよく取りざたされるが、ほかの業界で起こっていることから、ある程度予測するヒントを得ることができる。その中でも代表的な事例が総合商社だろう。

2000年初頭は総合商社の中抜きが話題となり、卸を通さず、直接、サプライヤーと顧客が取引をするようになり、商社中抜き論が取りざたされていた。仲介業者の役割が小さくなり、商社の役割は終わったとされ、株価も長らく低迷していた。

しかしその後、商社は仲介業者としての仕事から、新たなビジネスを見つけてきて投資する、インキュベーター的な、ビジネスプロデューサー的な、またインテグレーター的な(横文字ばっかり使うな!と怒られそうだが、要するに世間に散らばっている人的・物的資源を統合する役割)、そしてこれでもかと付け加えると、プラットフォーム的な役割にビジネスモデルを転換させて、見事、復活を遂げてきた。

商社中抜き論ならぬ、メディア中抜き論

さて、ネットメディアが発達する今、メディアでは“既存メディアの中抜き論”が起きている。

別にメディアの経済部の記者がいなくても、たとえば実際の大手コンサルティングファームのコンサルタントがコラムを書いたり、投資銀行家がコラムを書いたり、プライベートエクイティのプロがコラムを書いたり、一流MBAの経験者がコラムを書いたり、大手機関投資家がコラムを書いたり、しまいにはこれらすべてを経験したとかいう自らグローバルエリートと名乗る奇人が、『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』という大ベストセラーを書いたりと(ちなみにアマゾンで予約が殺到し、あらゆる本屋さんでかつての力道山のテレビに群がっていた群衆並みの黒山の人だかりができているらしい)、別に記者でなくとも情報を発信できるようになった。

そんな中、従来の記者が情報発信で付加価値を出すモデルは、転換を迫られている。これは当然で、実際にそれを経験したヒトが書いたほうが、その経験したヒトから聞いて書いた記事より詳しく深く、面白いのは当たり前である。

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