5年後、メディアは稼げるか? 田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(上)
セコい方向にいく誘惑
――過去8ヶ月、「東洋経済オンライン」を運営してきて、ページビュー(PV)はある程度上がってきたのですが、マネタイズが大きな課題になっています。
今のところ、収入の大半は広告なのですが、紙の広告に比べ単価が安いのが悩みです。とくに営業部員を介さず、アドネットワーク(多数のウェブメディアの広告枠を集めて、広告主に販売する仕組み)経由で広告を売る場合、単価は1PV=0.1~0.3円というのが世間の相場です。この単価では、質の高いコンテンツを創り続けるのはなかなか難しいところです。ウェブメディアの広告単価を上げるために、何がカギになるでしょうか。
そこは僕も日々考えているんですが、クリアな正解はもっていません。今は、アドネットワークを使えば、スケーラビリティが効く。つまり、PVが増えれば増えるだけ、広告収入は青天井で上がって行く。PVが5倍になったからといって、営業部員を5倍に増やさないといけないわけではない。シンプルなビジネスモデルです。
ただ、このやり方だけではいろんな意味で疲弊してしまう。PVを稼ぐために、タイトルがえぐくなったり、記事のページ分割が細かくなったり、セコい方向にいく誘惑がある。「これは本当に俺たちがやるべきことか」という自問自答がつねにつきまとう。
だから、PVに比例しない、人の力を使ったクオリティ追求型の広告も模索すべきですが、ネックになってくるのは制作リソース。PV比例ではないということは、アイディア集約的になるし、サービス業的になる。テーラーメイドのスーツを広告主ごとにひとつひとつ創っていくことになるので、それはそれで別の意味で疲れてしまう。
そこでいうと、スケーラビリティとクオリティを両立させるモデルはなくて、その両者のバランスをどうとるかということでしょうね。