5年後、メディアは稼げるか?

田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(上)

ネットに合うのは、社員300人の会社より30人の会社

直感的にですが、たとえば月間にPVが1、2億あれば、年間の広告収入は3、4億円にはなる。それだけ売上高があれば、スタッフ10人ぐらいは養えるし、影響力のあるメディアとしてサステイナブルに運営できると思う。その状況は、10年前から考えると、すごく画期的なことです。

田端信太郎(たばた・しんたろう)
LINE執行役員 広告事業グループ長
1975年石川県生まれ。慶応大学経済学部卒。1999年、NTTデータに入社し、BS/CSデジタル関連の放送・通信融合の事業開発、ジョイントベンチャー設立に携わる。2001年、リクルートに転職。フリーマガジン『R25』の源流となるプロジェクトを立ち上げ、『R25』創刊後は広告営業の責任者を務める。その後、05年4月にライブドアに入社し、ライブドアニュースを統括。ライブドア事件後には、執行役員メディア事業部長に就任して経営再生を担う傍ら、「BLOGOS」「MarketHack」「Techwave」などの新規メディアを立ち上げる。10年5月よりコンデナスト・デジタル社へ移り、『VOGUE』『GQ JAPAN』『WIRED』のウェブサイトとデジタルマガジンの収益化を進める。12年6月より現職。「LINE」「NAVERまとめ」「livedoorニュース」などの広告マネタイズを担う。著書に『MEDIA MAKERS』。

ただし、そこで働く人たちにとって、3年後はまだよくても、その会社で年をとり、結婚するとなったときに、5年後、10年後、20年後もサステイナブルかといえばわからない。そこに、未来がバラ色ではないという切なさがある。それでも、自分の好きな分野の媒体で好きなことを言えるのは、大企業の中で悶々としているよりはハッピーだという感じはしますよ。

――広告収入以外で有望なマネタイズ策はありますか。やはり有料課金でしょうか。

マネタイズ面では、広告や課金にかぎらず、いろいろな手法を試していったほうがいい。「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」みたいに手帳を売ってみたり、「ロッキング・オン」みたいにイベントで稼いだり。ほかに、湯川鶴章さんが立ち上げ時点の編集長だった「Tech Wave(テックウェーブ)」は塾をやっている。少人数制で定期的にみなが集まる仕組みですが、受講費は10万円以上ぐらいするんですよ。

――ほぼ日を運営する東京糸井重里事務所は売上高28億円、純利益3億円を稼ぐ、優良企業です。

手帳は物販だから、スケーラブルなんですよ。うまいなと思う。今の形に到達するまでに、ほぼ日は、歯を食いしばって、普通のバナー広告は入れてこなかった。そこは画期的なことだと思う。

今の日本のウェブメディアを見ていると、社員200人や300人で成り立つモデルを1個つくるよりは、社員15人や20人のモデルを20個も30個もつくるほうが、何となくネットメディアの環境に合った、最適な生物のサイズだという気がする。

今年は、ハフィントン・ポストの日本版も立ち上がりましたけど、日本では、紙メディアとしての蓄積や伝統がない純粋なオンラインメディアが、数百人を雇う規模にまで伸びるという気が直感的にしない。それは「情けないな」と思う自分もいるんですけど、そういうメディアがあったら世の中にとっていいのかというと、自信が持てない。今、全般的に言えるのは、メディア業界全体の雇用人数がシュリンクしていくことは間違いなさそうということぐらい。

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