5年後、メディアは稼げるか?

田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(上)

最近のスタートアップ企業は、クラウド的なプラットフォームのお陰で、社員一人頭のユーザー数やカスタマー数が、異様なまでに大きくなっている。たとえば、(画像共有ソフトサービスの)米インスタグラムは2012年にフェイスブックに10億ドルで買収されましたけど、当時のユーザー数3000万人超に対し、社員数はわずか13人ですよ。

つまり、ユーザー数を社員数で割り戻した数字が、昔とはケタが3つぐらい違う世界になっていて、あらゆる産業の中でも、かつてこんなに少人数の会社がこんなに多数の顧客を相手にしていることがあっただろうかというゾーンになってきている。かつては社員10人だと、どんなに頑張っても1000万人止まりだったのに、今だったら、理論上は10億人にまでいけるかもしれない。それをどう思うかの問題。これは挑戦者にとっては、すごくすばらしいことですよね。

――日本のカルチャーでは難しいかもしれませんが、既存のメディア企業からデジタル部門だけを分離独立させてベンチャー的に運営するとか、ベンチャー企業を買収して、社内に今までと違うエコシステムを創るという選択肢はありえないでしょうか。

一般論としてはやるべきだと思うんですけど、それが現実にはすごく難しいということも、肌身にしみてよく分かります。

仮にこれから出版社がボコボコ潰れるとして、ネット企業が、ブランドとして利用価値のある会社を安く買いに行って、そこに対しネット業界の知識、ノウハウを持ち込んでターンアラウンド(再生)すれば、ものすごくもうかるし、社会的にも意義があるかもしれない。ネット企業の側は、「ネット広告の単価が上がらないのは、メディアブランドとしての看板、伝統がないからだ」とつねに言っていますから、その弱点を補える効果もあるかもしれない。こういう話は、パワーポイントに書く事業計画としては、ものすごく美しく書けるストーリーだと思う。

でも現実的には、どちらが悪いとかではなく、人間と人間の相性とかケミストリーとかカルチャーの問題は本当に大きいですよ。そういう要素があるから、もし自分がこうした再生プロジェクトを手がけるにしても、うまくやれる自信はないですね。

(撮影:尾形文繁)

※ 続きはこちら:「勘違いジャーナリスト」たちにモノ申す

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