「勘違いジャーナリスト」たちにモノ申す 田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(中)
※ インタビュー(上)はこちら:5年後、メディアは稼げるか?
今、紙をやっている人は、紙が本当に好きな人
――もちろん、紙とネットのカルチャーの違いは大きいですが、世代の問題もありませんか? 田端さんはご自身を含むナナロク世代(1976年前後に生まれた世代)は、ネットと紙の両方を知る"両生類"だといっていますが、30代以下の、頭の柔らかい人たちが中心になってやれば、紙とネットの融合は、ある程度うまくいくのではないかと思っているんですが、甘いでしょうか。
そこはやや挑発的ないい方になるかもしれませんけど、今この2013年の時点で紙をやっている人は、本当に紙が好きなんですよ。小林弘人さん(実業家、編集者:雑誌『ワイアード』『サイゾー』を創刊。「ギズモード」など多数のウェブメディアを立ち上げた)が典型ですけど、あの人は、2000年ぐらいでネットに行っているじゃないですか。僕の知っている範囲でいっても、もともと紙にいた人でもネットが好きな人は、とっくの昔にネットに移っているんですよ。
だから、今、紙にいる人たちは、あえてわかって、紙に残っている人たちのはずなんですよ。そこを無理に、時代の流れがこうだからと首根っこをつかんでネットに来させるというのは、引っ張るほうも大変だし、引っ張られるほうもストレスだし、いろんな意味で大変。僕だけが両生類ではなく、そういう人はいっぱいいますけど、今も紙をやっている人は、本当に確信犯的に紙をやりたいと思っている人か、単純に鈍いか(笑)。
(電子メディアプラットフォームを運営する)「cakes(ケイクス)」の加藤貞顕さんとか、(出版エージェントの)コルクの佐渡島庸平さんとか、あれぐらい紙で実績があって紙を愛している人でさえ、今はもう紙にこだわらないといっているわけですから。
――よくITの世界でも、1990年代にIBMでリストラされた人たちが次々と起業して、それが今のシリコンバレーにつながっているというストーリーが語られます。それと同じシナリオがメディア業界でもあり得ないでしょうか。
なくはないですよね。でも、これをいうとペシミスティックですけど、ネットが好きな人はもうすでにネットに出てきていますよ。紙のメディア業界発ネット業界行きの最終電車が、リーマン・ショックの後から2010年前後にかけて、出てしまった気がする。いろんな人の顔を思い浮かべてみればみるほど、今でも紙をやっている人というのは、紙が好きでしょうがなくて、もうそれしか考えられない人がほとんどなんですよ。
その関連でいうと、僕にとって謎なのは、もっと出版社がバンバンとつぶれるかと思っていたんですけど案外つぶれないこと。意外としぶといなと思う。