「勘違いジャーナリスト」たちにモノ申す 田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(中)
新聞は、確実に死に至る病
――大手の出版社は不動産をたくさんもっていますから、このままでも10年、20年ぐらいはもちますよね。ただ雑誌は、広告収入が激減している上、新聞のように宅配で支えられていない分、販売部数もどんどん落ちています。これから5年でつぶれる出版社も出てくるかもしれません。逆にいうと、危機感が強い分、出版社から新しい動きが出てくるのではないかと期待しているのですが。
たしかに水位は上がっていますよね。それをいうと、リーマン・ショックのときに最後のボタンを押されたなと思っています。あそこから各社とも完全に変わっ たんですよ。もうさすがに紙にしがみついても、「本当にゆで蛙になるぞ」ということは、頭では完全にわかったんです。だからどこの出版社に行っても、今さら、「デジタル化をやるかやらないか」といった議論はしていません。
ただ、頭ではわかっていても、どうやってデジタル化をしていったらいいかわからず、体がついていかないところがある。やることはわかっているが、どうやっていいかわからない。
――新聞はどうでしょうか? 個人的に、一般紙はこのままではウェブの世界でビジネス的に全滅しかねないと思っています。日経新聞は有料会員が約30万人に達し、電子版単体でも黒字化するなどうまくいき始めていますが、一般紙はきついですよね。
難しいですよ。一般紙は、最後に1紙が残るくらいだと思いますね。
――ただ、新聞の場合は、宅配制度があるだけに、雑誌のように紙の部数が激減するというシナリオは考えにくい。
でも、だからこそ、確実に緩やかに死に至る病である気がしますけどね。逆にいうと、50年経つと100%確実に死んでますよ。でも50年後なんて、今の新入社員も定年になるわけですし、考えるのを止めようという世界ですけど(笑)。先送り構造ですよ。
――こうした状況を考えると、日本の新聞が5年後に大きく変わっている可能性はあまりないでしょうね。
そうかもしれないですね。物騒な言い方だけど、やはり本当に変わるためには、どこか1社が倒産しないといけないと思う。北海道拓殖銀行、山一證券がつぶれたことで、金融業界は変わったじゃないですか。メディアでも、拓銀、山一的なところが出てこないと変わらない。一回とことん既存のエスタブリッシュメントの側が崩れて、一般の読者も含めてこれで深刻に困ったなという時代がくるまで、変わらないのかもしれない。