商社と金融業界に、メディアが学ぶべきこと

メディア中抜き時代の、新しいメディア論

オンラインメディア編集長の新たな役割

では新たな付加価値の出し方はどこにあるかというと、かつて総合商社が中抜きされていたときに、新たなビジネスを見つけてそこにエクイティ投資で参加したように、各分野の売れる専門家のポートフォリオをそろえて、その内外の筆者のポートフォリオをうまくマネジメントするところにある。そして、大手メディアのブランドと顧客がついている間にビジネスモデルを転換しなければ、単に新規メディアに市場を持っていかれるだけで終わるだろう。

この点、われらが「東洋経済オンライン」などはうまくやっているほうで、ターゲットとする読者が関心を持つであろう分野の専門家を広く外部からそろえつつ、記者としての立場で取材しなければならない分野に関しては、内製化した記者が特集を組んで、外部専門家のプラットフォームへの組み入れと自社記者の活用に関し、その切り分けをうまいバランスでやっている。

つまるところ、内部記者に外部専門家と競合させて、なんでも自前で提供しようとするのではなく、外部専門家と担当分野を切り分けながら、幅広いニーズに応える上質の一流記者・専門家のポートフォリオマネジメントをすることが、編集長の新たな役割と言うことができるだろう。

なお外部人材の登用ということで社内記者と違って、せっかく発掘した人材が競合メディアに奪われてしまうリスクも適切に管理する必要があるが、その基本は編集長がそれぞれの書き手と誠実に信頼関係を築き、金銭だけで移動できない移動コストの壁を高める、の一点に尽きる。

株式投資のファンドマネジャーの役割に学ぶ

なおこの“書き手のポートフォリオマネジメント”は、株式投資のポートフォリオマネジメントから学ぶことも多く、たとえば短期的に株価が上がる銘柄をたくさん取り入れてしょっちゅうとっかえひっかえしていると、ポートフォリオ全体の安定性や信頼性に傷がつくし、かといってアップサイドのない有名銘柄を長らく持ち続けても、古臭い代わり映えしない万年割安ポートフォリオに堕落してしまう。

時にほかのファンドマネジャー(他社の編集長)がポートフォリオに組み入れられないような新規の才能を、自分の目と耳と人脈で発掘して育成するベンチャーインキュベーション的機能も求められるし、かつて高いパフォーマンスを見せても長期的に株価(人気とクオリティ)が低迷傾向にあり、再びアップサイドが望めない銘柄(作家)は、アクティブにリストラするという厳しい責任も併せ持つことになる。

そして何よりも重要なのは、ファンドビジネスでいちばん重要なのがその信頼性の供与であるのと同じく、上質なメディアの役割は、そのプラットフォームに参画できる著者たちの信頼性を、そのメディアが担保していることが決定的に重要になってくる。

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