埋もれた人材とは、具体的には、能力があるにも関わらず活躍の機会が十分に与えられていない人材のこと。例えば、管理職としてマネジメントを任せれば期待以上の成果を出せる能力があるにもかかわらず、
「あいつに任せても無理」「それなら、別のDさんのほうが適任に違いない」
と任用される機会を得ることができない、過小評価をされている人。あるいは、存在感を示すことが苦手、あるいは嫌いで、周囲から忘れられた存在の人。
自分目線の人事はキケン
筆者は前職の職場でたくさん遭遇しました。その1人が部下であったGさん。営業職として高い業績を上げているのですが、一匹狼的な仕事ぶりと上司は見ていました。そのため「人心掌握が苦手なので管理職には不適」と認識し、Gさんより後輩で一見すると面倒見がいい先輩に見えるSさんを管理職に抜擢しました。
ところが、後日になって、その判断が間違っていたことに気づかされました。Gさんこそ後輩への仕事のアドバイスに時間を惜しむことなく行っていたと、別の部下たちから聞いたのです。さらに抜擢したSさんのほうは、思いがけない評判を得ていました。上司の見ていないところでは態度が豹変。自分勝手で自身の評価を上げるため、後輩の手柄を横取りすることがあったというのです。
手遅れながら、筆者はGさんを埋もれた人材にしてしまった反省をすることになりました。自分としては、経験と勘で管理職に適任の部下を見出している自信があったのですが、それでは十分とは言い切れなかったということなのでしょう。振り返れば、
・同僚の印象
などを加えた複数の目で人材を評価すべきであったと反省しているといいます。ただ、筆者だけでなく埋もれた人材を作りだしている上司はたくさんいるように思えます。
その理由は、部下の立場の人たちから「自分は埋もれた人材ではないか」との嘆きをよく聞くことがあるからです。例えば、取材した食品メーカーの管理部門に所属するBさん。主任に抜擢された同期社員が相当数出ているにもかかわらず、自分は蚊帳の外。しかも、上司から
「仕事に対する専門性を高める学習機会を積極的に取っていない」
と指摘されていました。つまり、努力不足だから同期で出世が遅れていると言われたようなもの……と認識していました。おそらく、上司の評価は高くないのでしょう。
Bさんは、職場では自分はあまり期待されていない。でも、本当はもっと仕事を任せてくれれば、その期待に応える努力はしているので残念で仕方ない……と肩を落としつつ話してくれました。
実は、彼の過去の上司の評価は高いものでした。管理部門として求められる能力を高める学習に熱心で、知識も豊富と、むしろ逆の評価を受けていたのです。彼が“埋もれた人材”である可能性は十分にあります。とても残念な話です。でも、どうして真逆の評価で埋もれた人材になってしまったのか? その原因は経験と勘に頼った一元的な見方にあったようです。
管理職といえども、マネジメントスタイルはまちまちです。放任主義の人もいれば、事細かな指導をするタイプもいます。そのスタイルにより部下に対する見方も変わって、埋もれた人材が生まれてしまうことがあるようです。
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