日本の会社員がもっと「個」を優先すべき理由 個人のメリット優先が企業の成長につながる

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1人当たりのGDPでみると日本よりも高いアメリカ。その理由の1つに厳密に職務の内容を限定していることがあるようです(写真:pixelfit/iStock)
デジタルコンサルティングファーム、プリンシプルの楠山健一郎社長の体験から導き出された「アメリカにおける起業の極意」。連載第3回は生産性が高いといわれるアメリカ流の働き方について考察します。

アメリカ人の働き方に対する一般的なイメージといえば、「定時になった途端に帰ってしまう」「暇なときは平気で怠ける」といったネガティブな印象が強く、必ずしも生産性の高さには結びつかない人も多いかと思う。しかし統計データをみると、アメリカのGDPが19.48兆ドル(約2120兆円)なのに対し、日本は4.87兆ドル(約530兆円)で、日本の4倍近くある(2017年の統計)。

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1人当たりGDPのランキングでみても、アメリカは5.97万ドル(約654万円)で世界8位につけている。対して日本は3.8万ドル(約414万円)で同25位。その差はどこから生じるのか。大きな影響を与えているのが日本企業にはなじみの薄い「ジョブ・ディスクリプション」(職務定義)およびエグゼクティブ層とスタッフ層の「ギャップ」だ。

業務は厳密な「職務定義」で決める

アメリカでは、「ジョブ・ディスクリプション」によって各人の職務が明確に定められている。具体的な職務内容と目的、目標、責任、権限の範囲のほか、関連する社内外の関係先、必要とされる知識や技術、資格、経験、学歴などがすべて明文化されている。この概念は日本企業にはほとんど浸透していないし、言葉自体も耳慣れないかもしれない。実は、日米の働き方の違いを語るうえで、ジョブ・ディスクリプションこそが、重要なポイントなのだ。

日本企業では、たとえば売り上げを伸ばすためにマーケティングから営業、納品という一連の業務の流れをすべて満遍なくこなせるゼネラリスト人材が求められることが多い。マーケティング部門が困っていたら他の部署から人を回すようなことも日常的に行われる。コンビニなどをみてもレジに行列ができると、バックヤードで在庫整理をしていた人が表に出てきて、ヘルプに入るはずだ。業務上での助け合いの精神が浸透している日本企業ならではの特徴といえるだろう。

またこのアメリカ流の専門性への考えは根深く、大学選びや就職活動にも影響する。学生時代の専門学び領域がそのまま仕事につながり、法学部で学んだ学生は弁護士や企業の法務部に入るのであり、日本のように法学部を出て、営業業務をすることは基本的にない。

よってアメリカ企業では、ジョブ・ディスクリプションによって担当外の部署のヘルプに入ることは原則ない。マーケティングの部署がそれ以外の業務をすることもない。しかも営業担当でも外回りをする部署と、主に電話で営業をする部署はまったく異なるなど、業務内容が細かく定義付けられている。

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