日本の会社員がもっと「個」を優先すべき理由 個人のメリット優先が企業の成長につながる

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それでも、若いベンチャー企業の経営者には、アメリカ流のスタイルを採り入れる会社も多くなってきた。サイボウズの青野慶久社長などは、チームワークを重視しながらも、社員の副業を認めたり、留学などで自分の夢のために退職する若い社員をのちに復帰させるという「育自分休暇制度」を設けたり、個人の夢を応援する姿勢を打ち出している。

同社は日米の働き方のいい点をミックスさせており、かつて28%だった離職率が4%以下に下がるなど着実に効果を上げている。サイボウズの取り組みを見ると、アメリカ流に個人のメリットを優先することが、結果的には企業の成長にもつながるのだと私は信じている。

すべてアメリカ流に切り替えるのではない

これまでアメリカ流の働き方のメリットを強調し、日本流の弱点について主に言及してきたが、必ずしもすべてを欧米型に変えるのが理想だとは言えない。アメリカ人の働き方のいい点を導入しつつ、それを日本流の良さと組み合わせることが肝心だ。

また日本の大きな特徴として、アメリカにあるようなマネジメント層とスタッフ層の教育レベル、給与、そして働くことへの意識のギャップが少なく、むしろ平均的に高く、勤勉である。これは大きな武器であり、多様性のあるアメリカでは決して真似できないことである。

よって以下のような米国ジョブ・・ディスクリプション型と日本のゼネラリストの良いところを組み合わせた「ハイブリッド型」の働き方が今後の日本企業における理想的なパターンだと考える。

①有能な人に十分な権限と給与を与えて、効率性の高いビジネスモデルを設計させる。そして、②ジョブ・ディスクリプションとKPI管理を導入する。ここまではアメリカ方式だが、そのうえで以下の日本型方式を導入する。③教育レベルが高く、会社への貢献意識の高い個人がその職務を全うできるように配置すること。さらに④持ち場を離れて協力をする姿勢を出せる体制にすることだ。

④については、ジョブ・ディスクリプション型で定義されたことに固執しすぎると持ち場を超えて顧客の満足度を上げるという最終的な目的を失う弱点がある。しかし主業務を定義し、KPI(数値目標)を定義し、そのことで評価することを伝えた上で、持ち場を越え、会社全体に貢献する行動を持つことも第2評価軸としていれることで実現できると考え、私の会社では業績軸と行動軸の2軸で評価することで実際に実行している。

勤勉と言われる日本人に対して、欧米型のジョブ・ディスクリプション制を導入することは決して困難ではないと考える。アメリカ流の長所を採り入れたうえで、日本流の長所をうまく組み合わせれば、日本企業の成長の余地は大いにある。

楠山 健一郎 プリンシプル代表取締役社長

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くすやま けんいちろう / Kenichiro Kusuyama

1973年埼玉県生まれ。1996年国際基督教大学卒業。同年シャープに入社。2000年サイバーエージェント入社。2001年トムソン・ロイターグループ入社。2007年トムソン・ロイターメディア事業部門の日本責任者に就任。2010年オークファンに入社し執行役員に就任。2011年プリンシプル設立。

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