今、世界で名だたるグローバル企業が通年での人事評価をやめていることをご存じだろうか。有名なところだと、マイクロソフト、GE、アクセンチュアが挙げられるが、その他アメリカの先端企業でも、6カ月や3カ月といった短いサイクルで人事評価を行う方向にシフトしている。
この背景にあるのは、現代のビジネスが「VUCA時代」に入ったことだろう。
VUCAとは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉だ。シリコバレーでも盛んに耳にする言葉だが、経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われる。
1年先のサービス継続も予想できない時代に
もともとは軍事用語で「予測不可能な状態」を指す言葉だったようだが、ビジネスの世界では、現代のカオス化した経済環境を指す言葉として盛んに使われる。ビジネスを取り巻く環境は、個人のキャリアに至るまで複雑化し、将来を予測することが非常に難しい。
30年ほど前までは、製造業であれば用地買収から工場建設など、下準備にたっぷりコストと時間をかけてから生産に入っていたはずだ。3年や5年といった年度をまたぐ事業計画はまったく珍しくなかった。
現代はどうか。ビジネスがスタートするまでのスピード感がまったく違う。インターネットを活用すれば、即座にビジネスを開始できたり、ソフトウェアやアプリもすぐ作ってリリースすることも可能だ。サービス開始後も、1週間後にはユーザーのレスポンスを調査して、そのビジネスが成功か失敗かを判断することもできてしまう。
はやり廃りが激しいスマホ向けアプリなどでは、もはや1年先にサービスが継続しているかを予測することさえ難しくなってしまった。その状況下で「サービスインから1カ月の数字から考えると、このゲームの売上目標値に達するのは極めて難しい」と報告があったときに、1年かけてそれが売れるように改善策を練るだろうか。むしろ、この商品はもうやめて、次の商品開発に入ったほうが得策のはずだ。
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