社員の評価は「3カ月」単位が適当と言える理由 年次評価は時代遅れ、「1on1」で支援の機会に

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上司と部下の一対一の面談を短い期間で繰り返すことが、仕事の振り返りや進捗の確認に有効です(写真:shironosov/iStock)
デジタルコンサルティングファーム、プリンシプルの楠山健一郎社長の体験から導き出された「アメリカにおける起業の極意」。連載第6回は人事評価について。昨今のビジネス環境の変化のなかで、通年での人事評価は本当に有効かを問い直します。

今、世界で名だたるグローバル企業が通年での人事評価をやめていることをご存じだろうか。有名なところだと、マイクロソフト、GE、アクセンチュアが挙げられるが、その他アメリカの先端企業でも、6カ月や3カ月といった短いサイクルで人事評価を行う方向にシフトしている。

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この背景にあるのは、現代のビジネスが「VUCA時代」に入ったことだろう。

VUCAとは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉だ。シリコバレーでも盛んに耳にする言葉だが、経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われる。

1年先のサービス継続も予想できない時代に

もともとは軍事用語で「予測不可能な状態」を指す言葉だったようだが、ビジネスの世界では、現代のカオス化した経済環境を指す言葉として盛んに使われる。ビジネスを取り巻く環境は、個人のキャリアに至るまで複雑化し、将来を予測することが非常に難しい。

30年ほど前までは、製造業であれば用地買収から工場建設など、下準備にたっぷりコストと時間をかけてから生産に入っていたはずだ。3年や5年といった年度をまたぐ事業計画はまったく珍しくなかった。

現代はどうか。ビジネスがスタートするまでのスピード感がまったく違う。インターネットを活用すれば、即座にビジネスを開始できたり、ソフトウェアやアプリもすぐ作ってリリースすることも可能だ。サービス開始後も、1週間後にはユーザーのレスポンスを調査して、そのビジネスが成功か失敗かを判断することもできてしまう。

はやり廃りが激しいスマホ向けアプリなどでは、もはや1年先にサービスが継続しているかを予測することさえ難しくなってしまった。その状況下で「サービスインから1カ月の数字から考えると、このゲームの売上目標値に達するのは極めて難しい」と報告があったときに、1年かけてそれが売れるように改善策を練るだろうか。むしろ、この商品はもうやめて、次の商品開発に入ったほうが得策のはずだ。

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