社員の評価は「3カ月」単位が適当と言える理由 年次評価は時代遅れ、「1on1」で支援の機会に

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しかし1on1ミーティングは本来、経営側だけでなく社員にとってもメリットがあるものだ。部下の現状に上司が耳を傾けることで、悩みを聞き出すこともできるし、部下から相談ができる場でもある。上司が部下に寄り添い、育成につながる機会にもなることを看過するべきではない。

もし、部下の担当プロジェクトが不発に終わり、そのまま対応策を講じられないまま時が過ぎてしまえば、業績悪化につながり、結果的に給料を下げざるをえないことにもつながってしまう。早期に手を打てれば、そのリスクを回避できるので、社員個人の待遇面においても結果的にメリットがあるはずなのだ。

むろん、1on1を担当する直属の上司にとっては大変だ。彼らは日々の業務をこなしながら、毎月1回、複数の部下と対峙しなくてはいけない。弊社では、彼らに負担がかかることは十分承知していたが、最優先で達成しなくてはいけない項目として「1on1ミーティングの実施率を100%にすること」を決定した。ほかのどの業務よりも優先している。それほど徹底しないと、その重要度が伝わらないし、全員を自らの目標や達成度への意識づけを高めることができない。

VUCA時代を勝ち抜くための「人、文化、組織」

導入して1年半ほど経つが、実感としてはようやく軌道に乗り、個人の成長、ひいては会社の成長に貢献していると感じる。3カ月に1回、定期的に実施している外部の社員満足度調査では全体が70ポイントから76ポイントに上昇した。

とくに、支援の達成度の項目の1つ、「上司や仕事仲間から、職務上または自己成長の支援を受けているのか」では67ポイントから78ポイントと約10%以上アップしている。これは1on1の浸透が貢献していると考えられる。

現代は競争優位性が問われる時代だ。ただ、誰かが優れたサービスを開発しても、ほかの誰もがマネができてしまうことも事実だろう。では、何が違いを生み出すのかと言うと、「人と文化と組織」であると私は考えている。

企業がVUCA時代を勝ち抜くためには、各人のパフォーマンスや行動をきちんと評価できる体制を整えなくてはいけない。それを実現するための、1on1ミーティングであり、3カ月ごとの人事評価なのである。

楠山 健一郎 プリンシプル代表取締役社長

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くすやま けんいちろう / Kenichiro Kusuyama

1973年埼玉県生まれ。1996年国際基督教大学卒業。同年シャープに入社。2000年サイバーエージェント入社。2001年トムソン・ロイターグループ入社。2007年トムソン・ロイターメディア事業部門の日本責任者に就任。2010年オークファンに入社し執行役員に就任。2011年プリンシプル設立。

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