例えば、下記のような事例を想定してみよう。
年末に「来年の年間目標は3月に新しくサービスインする資産運用アプリの会員数を12月末までに10万有料ユーザーにし、売り上げを年間で1億円とする」と決めたとする。しかし実際に現場で起こるのは、開発の遅延でサービスインが6月末になるといった予期せぬトラブルだ。
実際にサービスインすると、株式の市場が暴落し、資産運用に対する関心は冷え込み、当初予定していた広告の効果も悪く、1カ月目の3万人の獲得目標が2000人と大幅に狂う。8月に目標が修正され、9月末には出資者などから心配の声が上がり、12月にはサービス廃止になってしまう――。
上記は1年、3年、5年で考えていたサービスが6カ月で廃止するといったケースだ。少し極端な想定例かもしれないが、これに近い事態は、その業界にいる人たちであれば身近に感じるところがあるのでないか。そのときに個人として年間目標を、12月に振り返ったとしても何の意味も持たない。
たとえ社員がいい結果を出したとしても、人事評価に反映されるまでに時間がかかりすぎたり、そもそも設定目標が消滅した段階で、1年間を過ごさなければならないようでは、仕事へのモチベーションにも個人の成長にもつながらないだろう。これこそが、年次評価で社員が成長しない根本原因である。
短時間での変革に即して人事評価も変える
つまり、現代の企業戦略に求められるのは、いかに速く、柔軟に動いて切り換えて、VUCA時代に対応できる組織を構築するかということだ。もはや朝令暮改を批判するのでなく、いかにスピーディーに組織として動けるかの機動力が大切な時代になってきた。
冒頭のグローバル企業の導入例は、そんなVUCA時代の人事評価という点からみれば極めて正しい選択と言える。かつては、年度末など年に1度の人事評価でも足りていた。ところが、ビジネスの構造変化がスピードアップし、短いサイクルで戦略を立てたり、変革しなくてはいけない時代に、人事評価が年に1度でよいだろうか。時代の変化に即して、人事評価も迅速に変えていく必要があるはずだ。
そのようなズレを解決しようと、弊社では3カ月に1度の人事評価を行っている。直属の上司と部下による「1on1(ワン・オン・ワン)ミーティング」を制度化した。毎月1回、3カ月後の目標に対する進捗や状況報告を15分程度で行う。もし予定どおりに進んでいないのであれば、その場で障害を取り除くなど対応策をとることも可能になる。
1on1ミーティングは必ずしも評価面談ではない。あくまで1on1ミーティングは社員の「支援の場」だ。そう聞いても、日本企業においては、上司と部下が1対1で対することにネガティブな印象があるかもしれない。従来の日本では「上司が部下に対して一方的に指摘をする」という図式が多かったからだろう。
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