「幸せの国」ブータンで見えた障害者の過酷

母親と暮らす20歳の青年が心配する未来

ブータンの首都ティンプーで、脳性マヒがあり障害者として生きるタンディン君のもとを訪れた(写真:筆者提供)
「“幸せの国”ブータンでは、障害者も幸せなのか?」
そんな疑問を抱き、ブータンの首都ティンプーで障害者支援の現場で働く人々に話を聞いた私は、その内容に愕然とした(前編記事「幸せの国ブータンでは障害者も『幸せ』なのか」)。少なくとも、「教育支援」「自立サポート」「当事者団体」という三者から話を聞くかぎりでは、とても幸せな環境とは言えなかった。
もう少し、その実態が知りたい。そんな思いから、私はティンプー市内に住む、障害者として生きる青年のもとを訪れた。タンディン君、20歳。母親のトゥッケンさんも同席してくれた。

――はじめまして、日本から来た乙武と言います。

タンディン:よろしくお願いします。

トゥッケン:ようこそ、おいでくださいました。

――まずは、タンディン君の障害の状況について教えてください。

トゥッケン:脳性マヒなのですが、彼の場合は手と足に障害があります。普通に歩くことができないので、普段は歩行器のようなものを使っています。

学校に行けるかもしれないという発想がなかった

――ブータンでは障害があると学校に通うことが難しいと聞きました。タンディン君は学校には通っていたのですか?

タンディン:いえ、通ってはいませんでした。

――それは学校に拒まれたから? それともお母様の意思?

トゥッケン:その当時はこの子のような障害者が学校に行けるかもしれないという発想がなかったんです。

――タンディン君は、可能ならば学校に通いたかった?

タンディン:うん、行きたかったです。

――もし学校に行けたら、何がしたかった?

タンディン:やっぱり友達と一緒に勉強したり、遊んだり……。

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