「幸せの国」ブータンで見えた障害者の過酷 母親と暮らす20歳の青年が心配する未来
――Draktshoでの生活は楽しいですか?
タンディン:僕としてはカゴを編むという仕事をもっとやりたいんですけど、なかなか教えてもらえなくて……。でも、ただ家にいるよりも友達がいるので楽しいです。
――本人がもっとやりたいのに、なかなか教えてもらえないのはなぜなのでしょう?
トゥッケン:この子は足だけでなく手にも障害があるので、思ったよりもうまくできないんですね。10年通っても、あまり上達しなくて……。それと、習ったことをすぐに忘れてしまうという性質もあるので、なかなか先に進めないんです。
お母さんの助けになりたい
――なるほど。でも、いずれはカゴを編む仕事で自立をしていく?
タンディン:いえ、僕は小さなお店を持ちたいんです。お菓子などを売る雑貨店。お店を大きくして、お金をたくさん儲けたいとは思ってなくて。でも、少しでも稼ぐことができれば、お母さんの助けになるから。
――とても聞きにくい質問で恐縮なのですが、その……順番で言えば、お母様のほうが先にこの世を去ることになってしまいます。そのときは……。
タンディン:お母さんがいなくなったらと思うと……怖い。とても怖いです。だけど、そうやってお母さんに心配をかけてしまうことが申し訳なくって……。
そう言うと、タンディン君は顔を真っ赤にしてこわばらせた。その目からは大粒の涙が流れ出す。隣に座っていた母のトゥッケンさんがたまらず息子の体を引き寄せ、その手で涙を拭った。
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