幸せの国ブータンでは障害者も「幸せ」なのか 彼ら彼女らは過酷な環境に置かれている

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国民の97%が「私は幸せである」と答えるブータンで、障害者の置かれている状況を聞く(写真:筆者提供)
“世界一幸福な国”というキャッチフレーズで知られるブータン。先代の国王がGNP(国内総生産)に代わるGNH(国民総幸福量)という概念を導入し、国として経済的な豊かさよりも精神的な豊かさを優先させてきた。その効果として、2005年の国勢調査では国民の97%が「私は幸せである」と答えている。
そんな話を聞くたび、私はある疑問を頭の中に思い浮かべていた。
「幸せの国ブータンでは、障害者も幸せなのだろうか?」
私はその真偽を確かめるべく、今年1月、ブータンの首都ティンプーへと向かった。
今回、お話を伺ったのは、障害児の教育支援を行うAbility Bhutan Society(以下、ABS)、障害者の職業訓練を支援するDraktsho Vocational Training Centre for Special Children and Youth(以下、Draktsho)、障害者の当事者・家族団体であるDisabled Persons' Association of Bhutan(以下、DPAB)の3団体だ。

ブータンにおける障害児の教育の実態

――ブータンにおける障害児はどのような教育を受けているのでしょうか?

ビシュヌ(ABS):わが国には16の特別支援学校があるので、障害のある子どもたちはそこで教育を受けることになります。

――すべての障害児がその特別支援学校で教育を受けている?

ビシュヌ:いえ、障害の程度が軽い子どものみで、そうでない子は通えていないのが現状です。

――ブータンには20の県があるとお聞きしました。自分が住む県に特別支援学校がないというケースも出てきますが、その場合はどうなるのでしょう?

ビシュヌ:残念ながら、現時点では学校には通えていない状況です。

――学校に通えていないということは、何かしら別の手段で教育を受けているのですか?

ビシュヌ:いえ、そうした子どもたちは基本的に家で過ごすことになります。家族が読み書きなどを教えるといったことも、ほとんど行われていません。

――つまり、教育を受けることのできない障害児が多くいる。

ビシュヌ:はい。そこで、そうした状況を改善すべく、2011年に私たちABSが設立されたのです。

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