幸せの国ブータンでは障害者も「幸せ」なのか 彼ら彼女らは過酷な環境に置かれている

拡大
縮小

――それはどういうことですか?

ガデン:その……つまり……男性が自らの性欲を処理するのに貴重な存在として見られてしまっているということです。

障害者年金などの制度はない

――そういうことが黙認されてしまっているのですね……。日本では経済的に自立することが難しい障害者に対しては、国から年金が支給されますが、ブータンにもそうした制度がありますか?

ガデン:いえ、ブータンにはありません。

――では、そうした人々はどのようにして生活をしているのですか?

ガデン:親が面倒を見ることになります。

――しかし、親というのは原則として、子どもよりも先にこの世を去ることになります。残された後はどうなるのでしょう。

ガデン:きょうだいや……親類縁者ということになるでしょうか。

――そうした年金制度の創設などに向けて、声を上げていくような動きはないのですか?

ガデン:実は、そうした動きも起こりつつあります。ブータンでは、いわゆる“障害者問題”に目が向けられるようになったのはここ10年くらいのことなので、これからさまざまなことが変わっていくのだと思っています。

教育も満足に受けられない。仕事もできず、家族も持つことができない。さらには、政府からの支援もない。このような状況を、当事者たちはどのように受け止めているのだろうか。

障害当事者団体「Disabled Persons' Association of Bhutan」職員のテンジン氏(左)と、キンザン氏(右)(写真:筆者提供)

――政府に対して、当事者団体として最も望んでいることは何でしょうか?

キンザン(DPAB):私は左手に軽い麻痺があり、障害当事者としてこの団体の職員をしています。いまは障害者政策にほとんど予算が回されていないので、まずはきちんとそこに予算をつけてほしいということがありますね。

次ページ教育に力を入れてほしい
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT