幸せの国ブータンでは障害者も「幸せ」なのか 彼ら彼女らは過酷な環境に置かれている

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――ブータンの障害者は、どれくらい自立することができているのでしょうか?

ガデン(Draktsho):ブータンでは歴史的な経緯として、視覚障害者に対する教育だけは早くから行われていました。ですから、視覚障害者のなかには仕事を持ち、社会的に自立をしている人も少なくありません。しかし、身体障害者となるとまだまだその数は少ないですし、知的障害者という存在については、最近になってようやくクローズアップされるようになったばかりです。

――障害者の自立を阻んでいる要因としては、どんなことが挙げられますか?

ガデン:まずはバリアフリー状況ですね。ご覧いただいたように、道路や建物の入り口は段差だらけですし、エレベーターが設置されている建物も一部です。そうした状況では、誰かの助けを借りなければ外出することもできません。

――昨日はブータンに来て1年半になるという日本人にお会いしたのですが、彼もこの1年半、街中で車いすの人を見たことは一度もないと話していました。

障害者の職業訓練をサポートする「Draktsho」職員のガデン氏(写真:筆者提供)

ガデン:あとは、やはり教育ですね。先ほども話に出たように、これまで障害者が教育の機会を得られることが少なかったので、どうしても職に就くことが難しいという現状もあります。そこで、私たちDraktshoは障害のある人たちに対して職業訓練を行っているのです。

――職業訓練というのは、具体的にどのようなことを?

ガデン:障害の状況やその人の特性に合わせて、さまざまなことを行っています。音楽や絵画、彫刻といった芸術系の活動をサポートすることもあれば、裁縫や封筒作りといった手に職をつけられるような指導も行っています。また、学校に通っていなかった人には読み書きから学んでいただくなどしています。

家族を持つのは難しい現状

――ブータンにおける障害者は、本人が望むならば、結婚して家族を持つことはできますか?

ガデン:なかなか難しいですね。先ほどもお話ししたように、仕事を持てないので経済的に自立できていないのです。そうしたなかで家族を持とうとすると、どうしても周囲にも反対されてしまうのが現状です。

――障害者の“性”に関してはどうでしょうか。たとえば、自慰ができない身体障害者はどうするのかといったようなことです。まあ、これは日本でもようやく取り上げ始められたばかりの問題なのですが……。

ガデン:身体障害者の自慰の問題というのは、まだ課題として挙がってきてはいません。ただ、男性の知的障害者が見知らぬ女性に抱きついてしまうといったケースは報告されています。また女性の知的障害者がいつの間にか誰が父親かわからない子どもを妊娠してしまっているというケースが散見されます。

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