「スキルの蓄積」を重視しない中国が払うツケ 「量」で考える中国人と付き合うには?

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──そこでスジ。

隣を見ると、衰退の20年とか言われながら、そこそこ豊かで、ユニークなものを作り、世界でも好かれている国があるじゃないか、と。日本は世界的に見ても企業の平均寿命が長い。多少とも日本と関わったことのある経営者は、そうしたところに注目している。

日本と中国に「ケンカ」する選択肢はない

──ITなども量の社会のデメリットを小さくできそうです。

自分たちが量で行動しているという意識はないから(笑)、そういう発想はありません。ただ、ITが使われた結果、量の社会のいいかげんさ、個人によるバラツキが修正されていくのは間違いない。今はスマホにより情報が瞬時に末端まで伝わる。これに、指示に従ったときのアメと従わなかったときのムチを組み込めば「あるべき」を伝えることができる。中国人は、メリットがあるとわかれば変化することに躊躇がないので、これで大きく変わる可能性がある。

スキルの蓄積との相性も悪くない。例えば、店舗の業務フローをスマホに入れ、位置情報などと組み合わせると、従業員の行動をデータ化できる。そうすると、効率を上げるにはどうするかを議論したり、優れた従業員のノウハウを共有したりすることが可能になる。

──お互いの思考様式の最大公約数がわかれば、入り口での食い違いは減らせそうですね。

『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』(田中信彦 著/日経BP社/1500円+税/349ページ)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただ、よく聞かれるのは「書いてあることはわかった。では、私の会社はどうすればいいでしょう」(笑)。何かの判断に役立ててもらえると思うが、ビジネスにはいろんな要因が絡む。正解はない。

とにかく、日本と中国は個人でも、企業でも、政府でも、何とかうまくやっていかなければいけない関係。嫌いでもいいが、ケンカするという選択肢はないんです。まともにぶつかれば被害が大きくなるのは日本だ。これが現実。桁外れの国が隣にある以上、日本としては方法を見つけて付き合っていかなければならない。以前より改善されたとはいえ、相手に関する無知はまだ危機的レベルにある。お互いの思考様式を理解して、避けられる軋轢は避けるのがいい。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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