古市憲寿が初小説で「安楽死」に挑んだ理由 ラストを包むのは凪のような静けさ

✎ 1〜 ✎ 263 ✎ 264 ✎ 265 ✎ 最新
拡大
縮小
「物語」という形に落とし込まれた古市憲寿氏の説く平成論とは(撮影:尾形文繁)
“空気読まない”発言で、炎上キャラとしても人気の社会学者、古市憲寿氏による初小説。最先端のライフスタイルと表裏一体に、ずしりと重い死の問題が横たわる。ラストを包むのは凪(なぎ)のような静けさ。古市氏に小説『平成くん、さようなら』を書いた意図を聞いた。

主人公は結果的に「僕」の部分が多い

──今回、小説という形を取られたのはなぜですか?

平成が終わるということで、何か作品を書きたいという思いがありました。本屋さんに行くと平成論の本がたくさん並んでるけど、全部失敗してる気がする。たまたま平成という名でくくられたこの30年間を理論化するのはすごく難しい。だったら物語の形を取ったほうが、平成という時代、その終わりの空気感を表現できるんじゃないかと思いました。

──主人公「平成くん」の人物像にご自身を投影されていますか?

友達の部分もあるけど、結果的には、僕の部分がすごく多くなったなと思います。恋人の「愛ちゃん」と触れ合うシーンは少し異常に見えるかもしれないけど、実際に僕は粘膜の接触が好きじゃないし、セックスが好きじゃないのはそのとおり。「こうなったら楽だな」みたいな感じの理想の描写です。よく潔癖症と勘違いされるんだけど、家の中は案外散らかってたり、他人のにおいには敏感でも自分のは気にならないとか、そういうところは近いなと思います。

──「僕はもう終わった人間」「僕に未来はあるのか」「時代を背負った人間は必ず古くなっちゃう」と平成くんは言う。平成の終わりに感慨深さみたいなものがある?

どうなんだろう。20世紀が終わるときは、もっと終末感とか世紀末っぽさが漂うのかなと思ったら、意外にだらーんと21世紀に入っちゃったじゃないですか。そこで平成はどうなるんだろうな、と興味があって。

次ページ平成はアーカイブの時代だから終わらないような
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT