「日本のブランド」に思い切り欠けている視点

機能性や楽しさだけでは物足りない

企業不祥事が絶えない昨今だからこそ、企業ブランド戦略の真価が問われる(写真:interstid/iStock) 
消費者が大量の情報にアクセスできる現在、消費者との接点である「ブランド」をどのように展開し他社との差別化を図っていくのかが、企業戦略上いっそう重要になっている。『ブランド戦略論』を書いた中央大学ビジネススクールの田中洋教授に詳しく聞いた。

「ブランド全能感」の危うさ

──KYBの検査データ改ざんや日産自動車の検査時不正など企業の不祥事が後を絶ちません。本書では、ブランドが不祥事を生む経緯について迫っています。

ブランドが長期間、シェア上位にあり、競争相手が弱いとき、そのブランドを所有する企業に一種の「緩み」が生じることがある。

2000年に集団食中毒事件を起こした雪印乳業の社長が、記者会見を無理やり打ち切ってエレベーターに乗ろうとした際、追いすがる記者に「僕は寝てないんだよ」と言って印象を悪化させたことを、多くの人が覚えているのではないか。また、米カジュアルファッション「アバクロンビー&フィッチ」のCEOが、「われわれはかっこよくて見栄えのする人たちしか相手にしない」というようなコメントをして、消費者の不評を買ったこともある。

こうした発言は「当社のブランドは強いので、何を言っても平気だ」「わが社は間違いを起こさない」といった過剰な自信に起因する。ブランドが強力になる一方で、慢心が生まれる。こうした現象を私は、精神分析学者のフロイトが唱えた「全能感」という用語を援用して「ブランド全能感」と呼んでいる。

すべての子どもは発達段階時に「世の中の人はボク、アタシの言うことを聞いて当然だ」と思っている。成長するにつれ薄れていくが、大人になっても姿を変えて発現することがある。ブランドも強くなると、全能感がよみがえってくるのではないか。

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