「日本のブランド」に思い切り欠けている視点 機能性や楽しさだけでは物足りない

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──不祥事を起こす企業に、共通項はあるのでしょうか。

日本企業のよくないところは、悪事もまじめにやること。大事な技術の伝承と同様に、「こうやってごまかせば誰にもわからないし、誰も損はしない」と、本来やめなければいけない不正作業をまじめに継承しているのではないか。日本企業の大きな問題の1つだ。

アップルはソフトやデザインを訴求している

――ブランド戦略で、日本企業に欠けているものは何でしょうか。

たとえば、アメリカ企業のアップルはモノづくりを誇っているのではなくて、ソフトウェアやデザインを訴求している。また、ディズニーランドに行った人は、魔法にかかったかのように高揚した気分になっている。電車の中でディズニーランドの買い物袋を持ってミッキーマウスの耳をつけている若い人は、魔法にかかったままなのだろう。

田中 洋(たなか ひろし)/1951年生まれ。慶応義塾大学大学院後期博士課程単位取得。75年電通入社。城西大学経済学部助教授、法政大学経営学部教授などを経て、2008年から現職。日本マーケティング学会会長を兼務。著書に『ネットビジネス・ケースブック』(共著)ほか(撮影:尾形文繁)

日本の企業は、このように「想像力」に働きかける側面が弱いと考える。想像力とは、単に機能が優れているとか、楽しいとか、心地いいとかいうことだけではなくて、情報や感情を結び合わせ、それらを一連のまとまりのある意味や物語に変換する力、と言い換えることができる。ブランドに想像力を持ち込むことは重要なポイントだが、日本のマーケティング戦略立案者はあまり理解できていない。

──日本の企業が有名ブランドを買う事例も増えています。買収後の展開が成功するケースと、失敗するケースがありますが、分岐点はどこにあるのでしょうか。

本書ではアメリカのP&Gと花王を比べてみた。花王は2006年にカネボウ化粧品を買収したものの、成果を出すのに10年程度の時間がかかった。カネボウは国内化粧品で資生堂に次ぐシェア2位で、かつ繊維業から出発した一種の名門。規模や歴史を前に花王は遠慮してしまって、カネボウの体質を変えることができなかった。

カネボウは2013年に美白化粧品で、顔だけでなく全身の皮膚の色の一部が抜けて白くなってしまう白斑(はくはん)を引き起こした。花王はカネボウの商品を管理し切れていなかったことになる。

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