「日本のブランド」に思い切り欠けている視点 機能性や楽しさだけでは物足りない

✎ 1〜 ✎ 262 ✎ 263 ✎ 264 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

対して、P&Gは数々の巨大ブランドを獲得して成功している。2005年にひげそり大手のアメリカ企業ジレットを買収。ジレットは男性用のカミソリだけでなくシェービング剤なども扱っており、こういった男性用化粧品が世界的に伸びていたことに着目して買収した。買収後もジレットはP&Gの成長に寄与している。

花王との違いはマネジメント力だろう。花王に限らず日本企業はジェネラリストを育成するケースが多いが、P&Gはブランドマネジャーをきっちり育てる。採用した人間をずっとマーケティング専門で育成する。M&Aを成功させるためには、マーケティングのベーシックなスキルが蓄積されていることが大事だ。

無印は「参照価格」を意識している?

──固定ファンが多い無印良品は値下げをして客数を伸ばし、売り上げを拡大しています。なぜ、値下げしてもブランド価値を維持できるのでしょうか。

ブランド戦略論
ブランド戦略論(田中 洋 著/有斐閣/4000円+税/524ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

値決めとブランド価値がリンクすることは間違いない。客数を伸ばそうとして価格を切り下げて、ブランド価値を毀損してしまうことは昔からよくある。下げすぎないために、「参照価格」という考え方があって、無印良品はこれを意識しているのではないか。参照価格とは、「高い」「安い」のラインとなる心理的な価格のこと。アパレルならばユニクロ、家具ならばニトリの店頭販売価格が、「安い」ゾーンの参照価格として現時点では機能していると見ていい。

──SNSの台頭などにより、企業の広告戦略も変化を迫られているのでは。

これまでブランド育成に貢献したのは、テレビや新聞、雑誌などの広告だった。今後はデジタル広告とどう向き合っていくかを、企業は問われることになる。

デジタル広告の最近の成功例は、スキンケアブランドのボタニストだ。大阪に本社を置くI-ne(イーネ)というあまり有名ではない企業が展開しているのだが、同ブランドはここ3〜4年で急速に伸びた。テレビ広告を打っていないのに、インターネット広告やSNSを駆使して販売を伸ばした。

たとえば、消費者に対して影響力のある人物(インフルエンサー)とパートナーシップを結び、そのインフルエンサーにインスタグラムなどのSNSで商品を紹介してもらう戦略を採用している。

ほかの企業も、オンライン動画などを作ってデジタル広告を強化しようとしている。ただ、まだ販売促進策の域にとどまっている。ブランド力を構築する確固たるデジタル手法は確立されていない。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事