韓国人がガッカリの「最低賃金」引き上げ余波 真冬の韓国で平昌冬季五輪以上に熱い話題
韓国で年明けから熱い話題になっているのが、平昌冬季オリンピックと、もうひとつ「最低賃金引き上げ」についてだ。
韓国ドラマを見ていると、頻繁に登場するのが、いくつものアルバイトをかけ持ちしながら生活する苦学生や就活生。韓国では、金銭的に厳しい家庭で生まれた彼らのことを「フッスジョ(土製の匙)」といい、実際、学費を稼ぐために休学する学生も珍しくない。
現役学生(21歳)に訊いてみても、「日本はアルバイトで生活がなんとか成り立つと聞いてうらやましい。韓国は最低賃金が安すぎて、アルバイトをそれこそ寝る間を惜しんでかけ持ちしてもひと月暮すのはカツカツ」。こんな答えが返ってくる。ちなみに「フッスジョ」に相対するのは、金銭的に恵まれた家庭に生まれた「クムスジョ(金の匙)」だ。2015年の流行語で、親の財力によって子の人生が決まる、という社会階級論のたとえだ。
最低賃金引き上げで雇用主から反発
そんな韓国でアルバイトやパートの最低賃金が2018年1月から大幅に引き上げられたが、「アルバイトのご飯代なし、最低賃金上がり実際の賃金減という逆説」(中央日報1月9日)「街の病院も最低賃金負担…夜間治療休日診療なくす」(朝鮮日報1月11日)と物議を醸している。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が昨年の大統領選挙で公約の一番に掲げていたのは「働き口」だ。当然それに大きく呼応したのが就職難で喘いでいる20~30代で、この年代は文大統領の中心支持層となった。
文大統領は昨年5月に就任するとさっそくこの「働き口」についての政策を矢継ぎ早に打ち出した。公務員や公社などの公共機関の非正規社員を正社員に格上げさせたり、公務員定員枠を広げたり、そして、この最低賃金引き上げもそのひとつだ。
韓国での最低賃金はここ数年7~8%ずつ引き上げられてきたが、それを16.4%と一気にアップさせ「7530ウォン(約753円)」とすることが昨年7月に可決された。日本では都道府県ごとに最低賃金が決められているが、韓国では全国一律となっている。そして、施行が今年からと発表されると、短期間での大幅な引き上げに雇用主側からは反発する声が上がっていた。
チェーン店のチキン店を営む店主(55歳)は、「アルバイトの数を減らして私が代わりに働くか、時間を短縮させるか。どっちにしても一方的なこんな上げ方は事業主のことをまったく考えていないわけで、人気取りもほどほどにしてほしい」とぼやいていた。
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