Aさんはかなり能動的に働いているが、それでも1日の売上は1万円に届かないくらいだという。それでもホームレスのなかではかなり儲けているほうだ。
「腰を痛めて鳶職を辞めたんだけどね。それまでは普通にアパートに住んでたよ。その時はまさかこんな生活すると思ってなかったけど、いつの間にか板についちゃったな。1回こういう生活するとね、自由があるでしょ?
時間に縛られないというのは、楽なんだよね。
もともと酒もタバコものまないたちで、昔は自炊してたけど今は面倒だからコンビニ生活だね。困ってはいないよ」
と、笑顔で語ってくれた。
彼は、周りに住むホームレスの人に援助や支援をしていた。ホームレスになりたての人は、どうやって生活していったらいいのかわからない。そんな人に対し、小屋を建てるのを手伝ってあげたり、ご飯をおごったりしていた。Aさんが住む一帯には、
「Aさんのおかげで助かった」
という人が何人もいた。
紙も集めれば現金化できるが、金属に比べると安い。1キロ数円の世界だ。台車を使って大量の紙を集めても、数千円にしかならない。町中で大きな台車を引っ張る人を見かけることがあるが、あの台車はごみ処理施設から貸し出された物だ。
集めるのは、段ボールやマンガ雑誌などだが、雑誌の場合“紙”として売るより“古本”として売ったほうがはるかに高く売れると気づいた人がいた。
彼は大阪の路上で、拾ってきた雑誌を並べて売り始めた。これが当たった。特に週刊少年ジャンプが発売される月曜日には、飛ぶように売れた。
儲かると暴力団の仕切りになってしまう
だが、前半でも書いたがホームレスの仕事は“儲からない”からいいのだ。雑誌を売る仕事は儲かったため目をつけられた。
いつの間にか暴力団の仕切りになり、ホームレスは安く使われるだけの人材になってしまった。
ただ、そもそも商品の雑誌がなければ売ることはできない。拾うのはホームレスの仕事だ。電車に乗り、網棚に捨てられた雑誌を拾う。駅のゴミ箱に捨てられた雑誌は、捨て口が狭く手が入らないようになっているので、針金などを突っ込んで拾う。そうして集めた雑誌は1冊50円で買い取られた。
ホームレス同士で縄張りができることもあった。駅でケンカになってしまい、殺人事件に発展したこともあったという。
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