AIが浸透すると民主主義に深刻な危機が来る

これから格差は「史上最悪」を更新しかねない

AIの発展で格差がさらに広がりそうだ(写真はアメリカの反ウォール街デモ:Brendan McDermid/ロイター/アフロ)

2008年のリーマンショックをきっかけにして世界的な経済危機が勃発すると、資本主義と民主主義のあいだで保たれていた微妙な均衡がとうとう破壊されてしまいました。

この連載の記事はこちら

富裕な資本家ばかりが経済成長の恩恵にあずかる一方で、不況になった途端に普通の人々にしわ寄せが集中するような経済モデルは、多くの人々にとって受け入れがたいものだったからです。

当時のアメリカやヨーロッパでは、失業や賃金カットによって生活苦に陥る人々が大量に発生しましたが、世界的に好景気だといわれる今でも暮らし向きがよくならない人々が多いといいます。

アメリカでは経済危機の前から「地殻変動」が起きていた

その結果として、人々の政治に対する不信はかつてないほど高まっており、一部の国々では民主主義が危機に瀕しているといっても過言ではない状況が生まれているのです。

『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

実のところ、世界的な経済危機が起こるずっと以前から、アメリカでは静かなる地殻変動が起こっていたようです。高卒以下の白人中年層の死亡率が、1990年代から一貫して上昇し続けていたのです。その原因として明らかになっているのは、オピオイド(鎮痛剤)による中毒死や自殺などに代表される「絶望死」です。なぜ高卒以下の白人中年層に絶望死が広がっていたのかというと、彼らの多くは人生がうまくいかず、働く意志もなく、生きる意味を失っていたからです。

1970年代に高校を卒業したアメリカ人にとって、彼らの親の世代が就いていた仕事を得ることはさほど難しくありませんでした。高卒で働きながらスキルを身に付けて、中産階級の生活を送ることは十分に可能だったのです。しかし、1980年代のレーガン政権以降、労働組合の力が弱められていった状況下では、労働者の賃金は思うように上がらなくなり、企業の利益ばかりが膨らむ傾向が鮮明になっていきました。

次ページ株主資本主義を改められないアメリカ
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 若者のための経済学
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • フランスから日本を語る
  • 御社のオタクを紹介してください
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
頭脳争奪<br>中国が仕掛ける大学戦争

国の未来を左右するのは優れた頭脳。大国化した中国は今、その受け皿となる世界トップレベルの大学をつくることに驀進中だ。1つの象徴が深圳(しんせん)の南方科技大学。教育強国となった中国の戦略と、受けて立つ日本の危機感が浮き彫りに。