AIが浸透すると民主主義に深刻な危機が来る これから格差は「史上最悪」を更新しかねない

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格差が拡大すれば拡大するほど、ポピュリストはますます勢いづいていくだけです。ポピュリズムの悪循環というのは、不満を抱えた有権者が無責任な公約を支持することでいっそう悪い結果をもたらし、さらに不満を募らせた有権者を満足させるために公約がますます無責任なものになるということです。アメリカではこの悪循環がまだ終わりそうもなく、むしろ始まったばかりなのかもしれません。

政治体制は古代ギリシャ時代のように循環していく?

古代ローマの歴史家ポリビオスの「政体循環史観」によれば、政治制度は「王政→僭主政(せんしゅせい)→貴族政→寡頭政→民主政→衆愚政→王政」のように循環して推移するということです。王政は腐敗して僭主政や貴族政が後釜に座りますが、貴族政も堕落して寡頭政に取って変わられ、やがては民衆に打倒されるといいます。民主政も時間とともに衆愚政へと劣化し、ついに民衆は王の誕生を待望するようになるといいます。このようにして政治体制の変化は一巡し、改めて次の新しい循環が始まるというわけです。

今日の先進国の政治家や国民は、この循環史観を強く意識しなければならないと思っています。私たちが享受している今の民主主義を、当たり前のものであると思ってはいけないのです。日本において近代から現代までの歴史はたったの150年程度であり、古代ギリシャのアテネで政治体制が一巡するのに400年程度を要したことを考えると、政治の時間の流れは直線的というよりも円環的にとらえるほうが正しいのではないでしょうか。

古代ギリシャのアテネで民主政治が凋落したのは、格差の拡大によってアテネ市民のあいだで激しい対立が起こってしまったからです。その結果として、デマゴーグ(当時の扇動政治家・現代でいうポピュリスト)が出現し、アテネは衆愚政治に陥るなかで著しく衰退していったのです。トランプ大統領の誕生はアメリカが衆愚政治の入り口に足を踏み入れていることを示しており、これから数十年単位の時間軸で見れば、アメリカでは王政や僭主政(現代でいえば独裁政に該当)が復活する環境が整いつつあると見て取ることができるでしょう。

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