アメリカの景気はリーマンショック後の2009年6月から9年を超える回復局面が続いているなかで、ITの技術革新で生活は便利になったとはいうものの、伝統的な産業では海外との競争が激化し、失われた良質な雇用はそのほとんどが戻ってきていない状況にあります。戦後で2番目に長い景気回復を謳歌しているにもかかわらず、所得が増えた家計は上位の20%だけであり、上位1%の富裕層がすべてのアメリカ人の所得の40%を独占するまでになっているのです。
国際的な協調の下で法人税の引き下げ競争に規制をかけたうえで、企業経営の中心に株価対策を据えるアメリカ型の株主資本主義を改めれば、グローバル経済下での技術の発展は普通の人々にも恩恵をもたらすことが十分に可能です。
生産性が上がっても喜ぶのは富裕な資本家や投資家だけ?
ところがアメリカでは、いまだに株主資本主義を改めることができず、普通の人々から所得を吸い上げ富裕層に再配分するというシステムが延命されています。そのようなわけで、経済格差は史上最悪の第2次世界大戦時の水準にまで拡大し、そういった格差への怒りはポピュリズムに迎合する人々が増える土壌を育んでいったのです。
共和党はずっと以前から、資本家や企業の利益を代弁する政党であり続けてきました。その一方で、民主党は労働組合を支援することを止め、エリートの意見を代表する政党に成り下がってしまいました。社会から落ちこぼれた低学歴の白人層は自分たちの利益を代表してくれる政党がなく、メディアでは彼らの絶望死すら注目されることもありませんでした。
2016年11月の大統領選で、低学歴の白人層の利益を約束したドナルド・トランプを大統領にまで押し上げたのは、ポピュリズムが台頭する不穏な情勢のなかで、彼らの熱烈な支持であったことには間違いありません。
いずれにしても、第4次産業革命の隆盛によって生産性を上げる企業が次々と現れれば、富裕な資本家や投資家は株価の上昇によって大いに喜ぶことになるでしょう。しかしその一方で、失業から生活苦に陥る人々が増加の一途をたどり、格差の拡大が史上最悪の水準を更新するという事態も避けられなくなるでしょう。
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