今のアメリカやヨーロッパにおける民主主義的な価値観は、日本人が思っている以上に衰えを見せ始めています。ハーバード大学の政治学者であるロベルト・フォア氏とヤーシャ・ムンク氏が2016年に公表した論文によると、驚くべきことに、今やアメリカ人の6人に1人が軍政を良い統治方法であると考えていて、1995年の16人に1人から大幅に増えているということです。
また、1930年代生まれのアメリカ人の7割超が民主主義を必要不可欠だと考えている一方で、1980年代生まれのアメリカ人で同じように考えるのは、たったの3割しかいないということです。
格差の拡大が史上最悪の水準に達しているアメリカほど深刻ではないものの、ヨーロッパでもイタリアやスペインなど若者の失業率が高い国々を中心に、民主主義に対する信頼感が大きく低下しています。リーマンショックに象徴される世界的な経済危機を経て、アメリカやヨーロッパで格差拡大が社会問題として大きなテーマとなり続けているなかで、政治家が大衆の不満や憎悪をあおって自らへの支持を求めるというポピュリズム的な手法を多用するようなことがあれば、その国の民主政治は衆愚政治へと堕落していくのに加えて、経済的にも衰退の道をたどっていくことが避けられないでしょう。
日本でも「反格差デモ」が起こりうる下地が整いつつある
アメリカやヨーロッパで起こっている民主主義の危機は、日本でも決して対岸の火事とはいえません。前回の連載コラム(「東京五輪後、日本の失業率は著しく悪化する」10月26日配信)でも申し上げましたように、日本は今後も労働力人口が減少し続けるとはいうものの、企業が一斉に急激な効率化を進めるようなことがあれば、2020年代のうちには失業率が上昇に転じることになり、格差をいっそう助長していく可能性が高いからです。企業の生産性や株価が今よりも上がっているかたわらで、雇用情勢が悪化して不安定な社会が到来しているというわけです。
ここに至って初めて日本でも、失業や格差が大きな社会問題としてクローズアップされてくるのかもしれませんし、アメリカのような絶望死に陥る人々が増えてくるかもしれません。アメリカ全土で2011年に起こった「ウォール街を占拠せよ」のような反格差デモが、将来の日本でも起こりうる下地は十分に整ってきているように思われます。そういった意味では、日本はアメリカを15年~20年遅れで追いかけているといえるのではないでしょうか。
それでも私は、日本人の知恵がそのような事態をきっと回避してくれると期待しています。
新刊『AI×人口減少 ~これから日本で何が起こるのか』においては、これからの10年~20年を見据えて、私たちの仕事、収入、社会がどのように変化していくか、実証的なデータを基に解説しています。ご覧いただければ幸いです。
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