AIはもはや気味が悪い存在?
中原:ほんの5年前には、「AIが将棋の名人に勝つことは難しい」「囲碁の名人には20年経っても勝てないだろう」といわれていました。ところが近年、AIが将棋の名人に勝ったばかりか、囲碁の名人まで打ち負かしてしまいました。AIの世界に何が起こっているのか、技術的な経緯も含めてお聞かせください。
伊東:現在のAIは、2012年にビッグバンが起きて、わずか5年ほどで今日のブレークスルーを迎えています。ということは、これから5年先はどうなるか、想像以上の進化があって不思議ではありません。
2012年に何が起こったかというと、カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授が、AIの画像認識コンテストでこれまで考えられないようなハイスコアを出したのです。理由はディープラーニング(深層学習)でした。人間の脳は5~6層のネットワーク層が重なっていて、1つの層で行った演算を次の層に送り、さらに次の層へと繰り返していくことで、高度な学習や思考ができるということが解明されていましたが、それをコンピュータ上で再現することで、人間に匹敵するレベルの高度な学習や思考を可能としたのです。
以降、多くの研究者たちがディープラーニングに取り組みます。そして、世間をあっと言わせたのは、英国のディープマインド社が開発した「アルファ碁」でした。これは、ディープラーニングを応用した初めての囲碁ソフトで、13層のネットワーク層を持っています。なぜ13層かと言えば、開発者たちには、それ以上深い層を追加すると暴走するのではないかという危惧があったからです。
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