中原:2012年にディープラーニングというビッグバンが起きて、ひょっとしたらもう1回あるいは2回、ビッグバンが起きる可能性があるかもしれませんね。そうすると、まったく想像のつかない世界が現れそうですが。
伊東:私が去年シリコンバレーに行って、UCバークレーやスタンフォードなどの先生たちの話を聞いていると、ビッグデータからディープラーニングするという時代から、次のステージに向かっているといいます。つまり、AIが身につけた知識を使って新たな知を生み出す世界まで行こうとしているらしいのです。AIは、人間と異なりほかのAIの知識を簡単にコピーできますからね。そうなると、やはり怖いですよね。
中原:AIがマネできないのは、共感力や企画力、発想力、創造力などといわれていますが、次のステージではAIがそれらの領域の大半までカバーする可能性があるわけですね。そうなれば、私たちの想定を超えて、AIが人間の仕事を奪う割合がいっそう高まってしまうのでしょうか。
人間が持っている感性はマネできない
伊東:先を見通すことは難しいですが、ひとついえるのは、人間が持っている感性はマネできないというか、ちょっとしたことですが生活を良くしようというイノベーションみたいなものが、最後の人間のよりどころになるのではないかと思っています。
イノベーションがどうして起こるのかというと、人間の思想のなかに「ゆらぎ」みたいなものがあると考えられているからです。つまり、効率性とか生産性などといった論理的な思考から生まれるものではないかもしれないのです。AIから見ると愚かしく合理的ではない、何か情緒的なものがイノベーションを生み出す源泉になっているかもしれない。それが救いのような気がします。
今のシリコンバレーでは、天才ではなく普通の人がイノベーションを起こすにはどうすれば良いか、ということに関心が集まっています。その最たる例は「デザイン・シンキング」ですが、彼らのやり方を見ていると、昔の日本のやり方をマネしているような気がしてなりません。「深く考えるな。考えるよりも手を動かせ」と教えているわけです。
実際、シリコンバレーの企業などは、こういった仕事のやり方をしています。何人かが集まって、ポストイットに自分の意見を書いてどんどん貼り付けていく。ほとんどのアイデアは採用されませんが、そういうムダになる行動をすることに意味があるというわけです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら